〈70代というのは新しいゴールデンエイジ…人生の黄金時代である〉。
330万部超のベストセラー『女性の品格』(PHP新書)著者・坂東眞理子さんの新著『70歳のたしなみ』(小学館)は、私たちが持っている人生観、年齢感覚を一変させる力強い言葉で始まる。
人生100年時代が現実となった今、かつての人生70年時代と同様、晩年意識で高齢期を過ごしていいのか。中高年の皆さんにこそ読んでほしい、後半生を幸せに生きるための至言を坂東さんに聞いた。
作家の五木寛之さん(86才)も近著で自身が歩んできた道程を振り返り、人生100年時代に50~75才あたりまでを人生の白秋期とするならばその季節は晩年ではない、むしろ人生の収穫期であると綴っている。
そんな五木さんは70才の時に『五木寛之の百寺巡礼』の企画を受け、3年かけて全国の百寺を踏破した経験を持つ。
「70から百寺を巡るというのは素敵ですね。知人が日本百名山に登ると聞いて、いきなり山登りに挑戦するのはハードルが高いかなと躊躇してしまうけれど、お寺ならこれからでも挑戦できるかもしれないと、意欲がわきます」
登山は体力的にも尻込みしてしまうけれど、お寺巡りならできるかもしれない、やってみたいと、今の自分が「できること」を見つけて新しい挑戦に心を躍らせる。その柔軟性と心意気が気持ちを若返らせて、70代の坂東さんを生き生きと輝かせているのではないだろうか。
「先日、川崎(神奈川)で講演を頼まれた時にいつもは東海道本線を使うところを小田急線と南武線で行ってみたんです。すると、川崎といえば北は高級住宅地、南は工業地帯といわれていたけれど、車窓から眺める景色はその通りで、なるほどと感心したんです。通過する武蔵小杉では高層ビルがこんなにも多いのかと驚き、日常でもいつもと違う路線に挑戦するだけで、数々の発見がありました。
これは小さな例ですが、70になっても行ったことがない場所、やったことがないことはたくさんあるものです。『このルートしか使わない』『私はこういう人間だから』と、自ら世界を狭めてはもったいないですよね」
思い通りに事が運ばなくても受け流せる余裕も大人だからこそ。