国内

新一万円札に渋沢栄一と東京駅 埼玉・深谷市が2倍沸く理由

深谷駅が東京駅丸の内駅舎にそっくりな理由とは

 1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)が全面的に刷新されると発表された。新しく1万円に用いられる渋沢栄一と東京駅丸の内駅舎に注目が集まるなか、実は深谷駅にも熱い視線が向けられ、地元では表と裏あわせて2倍の盛り上がりを見せている。ライターの小川裕夫氏が、渋沢の出身地・深谷というだけでない注目があつまる深谷駅と東京駅の深い繋がりについてレポートする。

 * * *
 4月1日に新元号「令和」が発表されたばかりだが、政府は新時代に向けて紙幣の改刷を発表した。一万円札の顔は長らく福沢諭吉だったが、新一万円札では日本の資本主義の父とも称される渋沢栄一に交代する。その裏面は、東京駅丸の内駅舎になる。

 新一万円札の裏面に描かれることが決まった東京駅の赤レンガ駅舎は、西洋文化をふんだんに取り入れた建築物として知られる。

 当初、東京駅のデザインはお雇い外国人のフランツ・バルツァーに一任されていた。お雇い外国人のバルツァーは日本文化に魅せられていた。その影響もあり、バルツァーは和洋折衷の駅デザイン案を提示した。しかし、日露戦争に勝利して一等国と肩を並べたという自負がある政府首脳にとって、和洋折衷のデザインは満足できるものではなかった。

 諸外国に一等国・日本の技術と文化を見せつけるシンボルとしての役割を期待された東京駅は、新たな建築家・辰野金吾を起用。辰野は政府の期待に応え、目を見張る赤レンガ駅舎へと姿を変えた。

 国の威信まで背負わされた赤レンガ駅舎は、その後、首都・東京を代表する玄関駅として認識されるようになった。新一万円札の裏面に採用されることで、名実ともに日本のシンボルになろうとしている。

 東京駅の美しい赤レンガ駅舎と対をなす存在として、鉄道ファンや地元民に知られているのが埼玉県の深谷駅だ。今回、新一万円札の裏面に描かれる東京駅に対して、なぜ深谷駅が対をなすのか? それは深谷駅の駅舎が赤レンガ風にデザインされており、東京駅と見間違えるほどの外観をしているからだ。

 東京駅と深谷駅は、なぜ似たような赤レンガ駅舎になっているのか? 一見すると、両者には何の関係もないように思える。しかし、二者には深いつながりがある。

 19世紀が幕をおろそうとする頃、東京は市区改正と呼ばれる都市改造が急ピッチで進められていた。都市を改造するためには、まず住宅や商店などを建て替えなければならない。木造家屋が立ち並び、江戸の面影を色濃く残していた明治の東京は、市区改正によって近代都市へと生まれ変わり、西洋のデザインを取り入れた建築物が増えていった。

 近代都市へ生まれ変わる東京は、大量のレンガを必要とした。その需要に目をつけ、地域活性化のための地場産業育成にも関心が高かった渋沢は、出身地である深谷で明治21(1888)年に日本煉瓦製造株式会社を設立。レンガ製造を始めた。そこで製造されたレンガが、その時代に建設が始まった東京駅に使われる。深谷から東京までは、高崎線を使って輸送された。

 東京駅は、深谷で製造されたレンガなしには存在しなかったのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【約4割がフジ社内ハラスメント経験】〈なぜこんな人が偉くなるのか〉とアンケート回答 加害者への“甘い処分”が招いた「相談窓口の機能不全」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
【被害女性Aさんが胸中告白】フジテレビ第三者委の調査結果にコメント「ほっとしたというのが正直な気持ち」「初めて知った事実も多い」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン