日韓関係はお世辞にも良好とは言えない状況が続いている。韓国側の不条理な要求に腹を立てる日本人がいても不思議ではないが、そういった考えの商店主が「韓国人観光客、入店お断わり」という貼り紙をした場合、これは憲法違反か? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
最近、徴用工訴訟問題などもあり、韓国との関係が冷え込んでいます。日本にやって来る韓国人は少なくありませんが、韓国人観光客の入店を断るような貼り紙を店が出した場合、このような差別的扱いは法的に許されるのですか。
【本文】
韓国人を差別する貼り紙を店先に公然と掲げるのは、いわゆるヘイトスピーチの表現行為です。平成28年制定のヘイトスピーチ解消法では、外国人に対する差別的言動がない社会を目指し、国や自治体に相談体制の整備や教育・啓蒙活動を求め、自治体もヘイトスピーチ解消に向けて取り組んでいます。
例えば、大阪市は「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」により、特定の人種などの一定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を排除する目的で、相当程度に侮辱する言動を不特定多数の人が知りうる状態ですることをヘイトスピーチだと定義しました。表現の自由に留意しつつ、一定の手続きを経て、行為者の氏名を公表できるとしています。
もっとも、特定人の名誉毀損や侮辱になる貼り紙でなければ、刑罰が科されることはありません。しかし、民事的には、この貼り紙を盾にとって韓国人に対し、飲食サービスを拒否すると、不法行為になる可能性があります。当事者は本来契約するかどうかは自由が原則。店も客を選べる営業の自由があります。ただし、差別禁止は憲法の基本理念です。