この4月、2018年度の視聴率「三冠王」を日本テレビが獲得したことが明らかになった。年度三冠王は5年連続。2位となったのがテレビ朝日だが、この4月から独自の戦略で日テレを猛追しようとしている。その“改革”の1つが「深夜」だ。テレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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4月第2週に入って、今春スタートの新番組が放送されはじめています。ここまで各局ともに保守的な戦略もあって、大きな反響を呼んでいるものはありませんが、ジワジワと話題になりはじめているのが、テレビ朝日の深夜番組。
まずプライム帯から、あえて深夜帯に移動させた『ロンドンハーツ』(火曜23時20分~)、『陸海空 こんなところでヤバイバル』(月曜23時20分~)、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(月曜24時20分~)は、「かつての過激な企画が戻りそう」「やっぱりこっちの時間帯のほうが合っている」などの好意的な声があがっています。
次に新番組では、今春に退職したばかりの宇賀なつみさんがお酒を飲みながらゲストをもてなす冠番組『川柳居酒屋なつみ』(火曜25時59分~)、芸能界屈指の売れっ子・バナナマンに運転のリスクを背負わせる『バナナマンのドライブスリー』(火曜24時20分~)、「今最も需要がある」と言われる千鳥がムチャなロケを連発する『テレビ千鳥』(月曜25時59分~)、「M-1王者の霜降り明星を育てよう」という意志を感じる体当たり企画『霜降りバラエティ』(木曜25時59分~)、『あの人は今!?』(日本テレビ系)の現代版を彷彿させる『いまだにファンです!』(土曜25時30分~)と、いずれも思い切ったものをスタートさせました。
プライム帯の新番組が、ファミリー層がターゲットの雑学番組『そんなコト考えた事なかったクイズ! トリニクって何の肉!?』(火曜21時~)という無難な内容だけに、なおさら攻めの姿勢を感じる深夜番組との二極化が際立って見えます。
◆ドラマに加えてバラエティも深夜は攻める
テレビ朝日は『ポツンと一軒家』などの成功で現在、民放各局による視聴率争いで2番手につけ、「何とかトップの日本テレビをとらえたい」という状況。「プライムタイムでは確実に視聴率を獲得したい。冒険をしたくない」という心境が透けて見えるようです。
今春、深夜帯に放送されている番組の中から、評判がよかった上に、サンドウィッチマン、弘中綾香アナ、長嶋一茂さんらの人気者が出演するなどファミリー視聴が期待できる『10万円でできるかな』(月曜20時~)、『激レアさんを連れてきた。』(土曜22時10分~)、『ザワつく!金曜日』(金曜20時57分~)をプライム帯に昇格させたことからも、その様子がうかがえます。
もともとテレビ朝日は、「プライム帯は確実に、深夜帯は攻める」という『報道ステーション』の終わる23時台を境にした番組編成を行ってきました。なかでも象徴的なのは連ドラ。プライム帯は『相棒』『科捜研の女』『遺留捜査』『特捜9』など事件モノのシリーズ作で固めて、視聴率につながりやすい中高年層の支持を獲得。一方、深夜帯では童貞と処女が対象の学園ドラマ『オトナ高校』、男性同士の純愛を描いた『おっさんずラブ』、働く気のないヒモ男が主人公の『ヒモメン』などの攻めた作品を放送してきました。
業界内外から、「目先の視聴率だけ追いかけている」「あのやり方では若者のテレビ離れを加速する」「テレビの未来を考えると看過できないダブルスタンダード」などと厳しい目を向けられることもありますが、リアリスティックな同局の戦略にブレはありません。今春の番組編成を見れば、ドラマだけでなく、バラエティでもその流れを加速化させている様子がうかがえます。
◆タレントの持ち味を最大化する愛情