国内

坂東眞理子氏の「70過ぎたら新しいものを着よ」は至言

津田塾大学学芸部教授・三砂ちづるさんが「70代」を語る

<「もう」70歳だから「今さら」何をしても遅すぎる、「どうせ」成果は上がらないと自分をおとしめるのは金輪際やめよう>──そんな力強いメッセージで読者を励ます『70歳のたしなみ』を著したのは、昭和女子大学理事長・総長で330万部超のベストセラー『女性の品格』(PHP新書)著者・坂東眞理子さん。早くも重版が決まるなど話題を呼ぶ本書を読んで、津田塾大学学芸学部教授の三砂ちづるさん(60才)はどう思ったのか。

 * * *
 数の上でも行動の上でも、この国を大きく動かした「団塊の世代」が70代を迎えている。この人たちの前に道はなく、この人たちの後に道はできる。そういう「史上初めて」な生き方をしてきた方々であった。私は団塊の世代から遅れること約10年、の世代なので、この世代の方々が何を壊し、何を叫び、何に異議申し立てをし、何を変えてきたのか、よく知っている。大量に恋愛結婚をし始め、学生時代に同棲し始め、家業は継がないことにし、都市で働いて経済力を持った。形式張ったことをきらい、今、葬式も墓もいらない、とおっしゃる中心にもこの世代の方々がいる。

 著者の坂東眞理子先生も、そのあたりのことをよくわかっておられて、「団塊の世代が子育てに失敗した(ケースが多い)のは、史上初めて大多数の親が子どものほしがるものを買い与えることができる経済力を持ち、子どものために使う時間を十分もつようになったからではないか」とおっしゃっている。要するに初めてのことでお手本がないので、子どもを保護し甘やかすお金の使い方をしてしまい、日本全体が成金的に子供を甘やかして育てたのではないのか、と。

 そしてそれは失敗だったのだから、同じ現象を高齢期に生じさせてはいけない、お金と有り余る暇があったとしても、それで自分の健康や楽しみだけを追い求めると、「子育てに失敗」したように高齢者としても失敗する、だから、もっと「たしなみ」を持って人の役に立つように生きていきましょう、というのがこの本である。団塊の世代の「失敗」の上に書かれているわけである。

 年齢というのは、人がとるものであって、自分はいつまでも変わらない気でいるのだからおそろしい。若い頃と同様に、いつになってもあれやこれやにおろかに翻弄されているので、いつ自分が還暦になっていたのだ、と、びっくりする。だいたい、女子大などに勤めていて、若い学生たちと行動しているから、自分もつい同じくらいの年のつもりでいてしまい、みんなで撮った写真を見て、一人だけ場違いな私が混じっていてぎょっとするのである。

「年をとってからは手をかけないと、痛ましくてみていられない。見た目を気にせよ」、と、年甲斐のない失態はしないように、女子大の学長を務める人生の先輩が書いてくださっているのも、この本である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン