少子高齢化がすすむなか、社会保障費の増大は避けられない。高齢者が増えるなか、年金への不安も広がっている。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の財政危機を克服しつつ、年金を改革する方法を提案する。
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2019年度の一般会計予算は、総額が過去最大の101兆4571億円に達し、当初予算として初めて100兆円を超える規模となった。そして、そのうち3分の1の34兆円を占めるのが社会保障費だ。高齢化に伴い、年金や医療などに莫大なカネが必要になっているのだ。
ただし、年金問題が深刻化しているのは日本だけではない。今や世界各国で重要な政治課題になっている。
なかでも、いま最も政府への批判が高まっているのはフランスだ。財政難で年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げたが、さらに満額年金の支給開始年齢を2023年までに65歳から67歳に引き上げることになっており、これに対して国民が不満を募らせているのだ。
アメリカはレーガン政権時代、このまま行くと年金が払えなくなるということで401k(確定拠出年金)制度を導入し、年金を企業に丸投げして対応した。これは、企業の従業員が自分で老後に向けた積み立てを行ない、国はその拠出金を税制で支援し、企業は従業員の拠出金に一定の金額を上乗せする仕組みだ。転職した場合には新しい職場に移すことができる。掛け金は株や投資信託などで運用されるため、結果的にその後、アメリカの株価は9倍に膨らんだ。
日本も「日本版401k」を導入したが、アメリカとは全く異なる制度である。日本の確定拠出年金は「企業型」と「個人型」の二つがあり、前者はもともと企業が従業員の老後のために積み立てていた企業年金・退職金を新たに確定拠出年金制度に切り替えたもので、企業側が掛け金を支払っている。後者は個人が掛け金を支払うものだが、現状では積み立て不足で加入者も少なく、アメリカのように公的年金に取って代わるものにはなっていない。