息子のふりをして高齢者の住む家に電話をかけてお金を振り込ませる、いわゆる“オレオレ詐欺”が激増したのは15年ほど前。その5年後くらいから、「還付金がもらえる」と偽って銀行ATMを操作させて逆に振り込ませる“還付金詐欺”が登場し手口が巧妙化したが、最近では「アポ電」による強盗殺人事件が起きるなど、手口の凶悪化が顕著になっている。
警察庁によれば、平成26年のピークから減ってはいるものの、平成30年の特殊詐欺の認知件数は1万6493件、被害額は約356億8000万円に上る。1日に1億円の被害が出ている計算だ。
巧妙化・凶悪化する一方の特殊詐欺を見破り、引っかからないようにするにはどうすればいいか。日本防犯学校学長の梅本正行氏に聞いた。
「特殊詐欺では次々に新しい手口が出てきて、国民生活センターがまだ注意喚起していない手口も多々ある。警察は把握しているが、公にすると模倣犯を生むので、公開しないこともある。たとえば、息子を装うオレオレ詐欺なら、皆さん、『本当に息子なのか電話をかけ直して確認すればいいのに』と思いますよね。実は電話をかけて確認する人は多いのです。ところが、息子役の犯人は『しばらく電話に出られない』と伝え、詳しい手口は言えないが、息子本人に電話をかけたのにつながらないという状況を作り出すことまでやる。むしろ、高齢者だと引っかかるのが普通と考えた方がいい」(梅本氏)
特殊詐欺を実行するグループは、会社さながらの組織を構成していることが多く、完璧なマニュアルが準備され、構成員らは営業マンのように目標金額を課されて電話をかけ続けるという。こうしたトライ&エラーのなかから、不具合への対処法や新たな手口のアイデアも生まれ、より洗練されていく。
だから、個別の手口を頭に入れておくのも大事だが、根っ子の部分、つまり電話というハードで対処するのが効果的という。