ソメイヨシノの花びらが、一枚、また一枚と静かに散り、ふわりとお濠に浮かんだ。その様子を愛でながら、腕を組まれた天皇陛下と美智子さまがゆっくりと歩まれる。居合わせた“皇居ランナー”にも笑顔を向けられた。
4月7日の朝7時ごろ、両陛下は皇居北側の北桔橋門から外へ出て、約10分間、皇居の外周の桜を楽しまれた。退位を目前に控えた慌ただしい日々の中、穏やかな時を過ごされたことだろう。
その前日、高輪皇族邸(港区)のすぐ近くでは、『高松桜まつり』が開催された。高輪皇族邸は、両陛下が退位後、皇居・御所からお引っ越しされる予定の場所だ。赤坂御用地(港区元赤坂)内の東宮御所を、上皇のお住まいである「仙洞御所」に改修するまでの1年半ほど、そこに仮住まいされるという。
「両陛下は“6月”にも高輪皇族邸にお引っ越しされてくると聞いています。当日は町内会の役員が正装してお出迎えする予定です。
敷地内には立派なしだれ桜があって、外からでも塀越しに見えるんです。来年春には、両陛下と同じ桜を見られると思うと感慨深いです」(桜まつりの参加者の1人)
近隣住民は一様に、両陛下のお引っ越しを“今か今か”と心待ちにしている。しかし、実は、そのスケジュールの目処は現状、まったく立っていない。その理由の1つは、おふたりのご多忙さにある。
「連日の公務に加え、4月末日の退位礼正殿の儀をつつがなく終えるための準備と体調管理が最優先です。お引っ越しの用意やスケジュールのご相談などできる雰囲気ではないそうです」(宮内庁関係者)
職員の頭を悩ませるのは、おふたりのお持ち物の多さだ。まずは、お召し物。どこの家庭でも女性の衣類は多いもの。両陛下でも、特に美智子さまのお洋服は多い。
「あらゆる場面にふさわしいお洋服を備えられているため、その数は相当なものです。しかも、たとえば美智子さまの代名詞でもある素敵なお帽子でも、重ねて置いておくわけにはいきません。1つ1つ専用のケースに入れて、保管されています。お召し物やお履き物も同じで、しわにならないように、傷がつかないように、丁寧にしまってあるのでかなり広い収納スペースが必要です」(別の宮内庁関係者)
両陛下ともに、かなりの読書家として知られる。陛下は魚類研究の専門家であり、関連書籍や資料も多い。美智子さまも絵本や児童書に精通されていて、「御所の中には、両陛下が大切にされている書籍が本棚にびっしりと並んでいる部屋がある」(皇室関係者)という。
両陛下は海外の賓客と会見される際、お土産の品やプレゼントの交換が行われることが多い。
「平成の30年間で両陛下はあらゆる国々や地方の特産品などを受け取られ、その点数は膨大です。御所の地下にある広大なスペースに丁寧に保管されていると聞いたことがあります。大切な品々なので、処分するわけにも、誰かに譲るわけにもいきません」(前出・宮内庁関係者)