玄関先の立ち話で済ませる学校も
新年度を迎え、小学校では新しい担任の教師が各生徒の自宅を訪ねる「家庭訪問」の時期となっている。
ひと昔前の家庭訪問といえば、教師が生徒の自宅にあがり、親からお茶菓子を振る舞われながら話し込む光景が一般的だったが、近年は玄関先で5~10分程度の立ち話で済ませたり、「地域訪問」や「学区訪問」などと名称を変え、個別訪問を廃止したりする学校も増えている。一体なぜなのか。教育評論家の石川幸夫氏がいう。
「いまは共働きの家庭が増えて、指定された日時に自宅にいられない保護者が多いことがありますし、学校側も教師が忙しすぎて1日に回れても4、5軒がいいところ。それならば授業参観日などに希望者だけ学校で面談を行うなど、段階的に個別訪問を廃止しようという流れにあります。
そもそも、保護者アンケートを取ると、どこでも7割近い人が『断れるなら断りたい』と家庭訪問に積極的ではないうえ、『ウチは家庭訪問なんて必要ない!』と直接学校にクレームをつける親もいると聞きます」
前述のように、家庭訪問を廃止しても、わざわざ教師が地域を回る日を設定しているのは、通学路の安全性確認や、自宅の位置確認という目的があるためだ。
だが、一方で親の中には家庭訪問の必要性を説く声も根強くある。神奈川県に住む40代の女性が話す。
「新しい担任の先生がどんな人なのかは、たとえ短い時間の立ち話でも1対1で話してみないと分からない事だってありますし、子どもによってはアレルギー体質など個別に先生に相談しておきたい親もいると思います。
学校に行く授業参観や保護者会の機会にやってもいいのでしょうが、兄弟がいる家庭は面談もハシゴしなければならないので、ゆっくり先生と話している時間がありません」
もっとも、日ごろから教師や学校との緊密なコミュニケーションを望んでいる親は学校側にとってもありがたいだろうだが、厄介なのはまったく意思疎通ができない親の存在だ。千葉県の公立小学校に勤務する30代の男性教諭が声を潜めていう。