胸やけ、ゲップ、胃もたれ……症状だけ聞くとどうせ食べすぎだろうと思ってしまうが、油断してはいけない。「逆流性食道炎」という病気の可能性が高いからだ。逆流性食道炎は30年前に比べ罹患率は10倍になり、まだ診断を受けていない潜在層を含めると患者数は1500万人になると推定されている。すでに“国民病”ともいえる状況だ。
この病気を放置していると重大な疾病につながり、最悪の場合は命を落とすこともある。国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実名誉院長が警鐘を鳴らす。
「逆流性食道炎が続くと、食道の粘膜が、胃と同じような、酸に強い上皮に置き換えられる『バレット食道』という状態になってしまう。この状態になると食道の胃に近い部分に『腺がん』ができやすくなります」
さらにこの病気は高齢者の命を奪う“最大の敵”をも招いてしまう。西山耳鼻咽喉科医院理事長の西山耕一郎医師が解説する。
「逆流性食道炎の合併症として起こるのが誤嚥性肺炎です。通常の誤嚥性肺炎は食べたものが気管に入ることで起きますが、高齢になると下部食道括約筋の力が衰え、胃に入った内容物が食道内を逆流して誤って気管に入ってしまうのです。
ものを飲み下す嚥下機能の低下は、早ければ40代から始まり、70代から増えます。気管に異物が入ると、通常はむせて排出しようとしますが、高齢になるとその防御機能が鈍くなりむせなくなるのです」