「出羽守(でわのかみ)」とは、もともと江戸時代の「出羽国」(現在の秋田県、山形県)をおさめる長官のことを指す言葉だが、転じて何かにつけて他者を引き合いに出して「○○では~」などと語る人のことを、揶揄する意味を込めて使われている。SNSの普及によって、多くの「出羽守」が発生し、目にする機会も増えた。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、そんな出羽守の一分派「北欧出羽守」たちが、党派性に拘るあまりどのような態度をとるのかについて考えた。
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AFP通信が、「フィンランド議会選、極右政党が躍進 1議席差で第2党に」という記事を配信したが、この行方は日本のいわゆる「人権派」の皆様にどう影響を与えるか。この記事に対し、弁護士の山口貴士氏がこうツイートした。
〈北欧出羽守の方々、ご健勝のこととお慶び申し上げます。所詮、制度というのは、法制度、歴史、伝統、国民性等の全体のバランスで成り立っているので、北欧の良く見える部分だけを切り取って輸入するという発想自体が間違いなのです。〉
「北欧出羽守」の意味は、「北欧では」と前置きをしたうえで、いかにフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク(特にスウェーデン)の福祉が進んでおり、人種差別もなく、人権意識があるかを説明し「一方日本では……」と日本を叩く類の人々を意味する。
山口氏は、「北欧出羽守」の方々が、果たしてこの記事に対してどのように北欧及びその国の人々の「民意」を擁護するかを問う形となった。だが、彼らは明確には答えられないだろう。基本的には、「とにかく日本を下げたい」ということしか考えられない人は、その論拠を揺るがす話題が出たらそっと目を閉じるのである。
2011年のノルウェー連続テロ事件は、移民に反対するブレイビク受刑者が77人を殺害するという未曽有の悲劇となったが、これは「北欧」で起きた話なのである。