まだお子様たちが小さかった頃、美智子さまは東宮御所内に専用のキッチンを作り、ご家族のために自ら料理をされていた。通常、天皇皇后両陛下はじめ皇太子ご一家のお食事は、宮内庁大膳課に所属する専属の料理人が作る。したがって皇太子妃がキッチンに立たれるのは、当時あり得ないことだったが、美智子さまは子供たちに手料理を食べさせたいという、母親としての当たり前の思いが皇室に新たな風を吹き込んだのだ。
忙しい公務の傍ら、美智子さまは3人のお子様たちのお弁当を毎日手作りし、きれいな彩りにこだわって工夫を凝らしていらっしゃったという。中でもよく作られたのが、鶏のそぼろ、いり卵やいんげん、椎茸を味付けてご飯の上に載せた三色ご飯のお弁当。お子様たちに大好評だった。
美智子さまお手製の料理は、いったいどんな味なのだろうか。実際に食べたことがあるという、天皇陛下のご友人で、『天皇陛下のプロポーズ』(小学館)の著者、織田和雄さん(83)に話を聞いた。
「両陛下が結婚された翌年、夕食の後に、美智子さまが手作りのフルーツポンチを振る舞ってくださいました。その時は私がアメリカに行く前の送別会として催してくださいましたので、心を込めた一品をと考えて、準備してくださったのでしょう。両陛下の優しいお気持ちが胸にじんと染み、とてもおいしく感じられました」(織田さん・以下同)
陛下とテニスを通じて長年交流してきた織田さんには、とても印象的だった美智子さまの手作り料理がある。それは、陛下が皇太子だった頃、東宮御所に伺ってご家族と一緒にテニスを楽しんでいた時のこと。