病気の「検査」と言えば、すでに発症している人の病気を見つけるためのものがほとんどだった。たとえば「がん」なら、画像診断などの検査で疑わしい結果が出たら、細胞を採取して病理検査を行ない、診断を確定する。
また、これまでのがん検診は、胃や大腸など、がんの部位ごとの検査が一般的だった。だが近年は、遺伝子を調べることで、あらゆるがんを横断的に検査することが可能になった。
なかでも注目されるのが、「CanTect(キャンテクト)遺伝子検査」である。医療法人DIC宇都宮セントラルクリニック理事の佐藤俊彦医師が指摘する。
「この検査では、血液からDNAやRNAといった、いわゆる“遺伝子”を抽出して、がんに関連する変異を調べます。具体的には、がん化を促進する遺伝子を調べる『遺伝子発現解析』や、がん化を食い止めにくい遺伝子を調べる『DNAメチル化解析』などを行ない、“がんになるリスク”を数値化します」
通常の画像診断や病理診断に比べて優れているのは、超早期の“ステージ0”でも診断が可能なことだ。
「人間の体内にがんが発生する際は、たった一つの細胞の異変からスタートします。そこから、5~20年ほどの長い年月をかけて増殖して、画像診断や病理診断で確認できる大きさになります。逆に言えば、がんがある程度まで大きくならないと、従来の検査では発見できませんでした。
それをCanTect遺伝子検査では、発がんする前の遺伝子障害を発見することで“超微細ながん細胞”の存在を超早期に見つけることができる。言わば、5年先に発症するがんを発見できるのです」(佐藤医師)