避けられない死をどう受け止め、どう生きるべきか。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、44歳女性の人工透析を中止し、結果彼女が亡くなった東京・福生市の福生病院で起きた透析中止をめぐる問題をきっかけに、「死」について考えることの本当の意味について考察する。
* * *
公立福生病院の透析治療中止をめぐる問題を前回、取り上げた。その後、日本透析医学会は調査委員会を立ち上げ、福生病院の調査を開始した。透析を中止し死亡した44歳の女性だけでなく、ほかの症例も継続して調査。4月中には結論を出す予定だという。
厚生労働省が2007年に作成したガイドラインでは、透析中止や導入見送りをすることができるのは、「生命の危険につながる」「全身状態が極めて悪い」という二つの条件に当てはまるときとしている。
さらに、方針の決定にあたっては、患者本人の意思が文書で書かれていることを重視し、同時に家族や医療チームが十分に話し合い、難しい問題があるときには倫理委員会に助言を求めること、そんな内容の提言を2014年に公表した。
ガイドラインに照らし合わせると、44歳の女性は透析を続けていれば、あと数年は生きられた可能性が強いので、「生命の危険につながる」にも「全身状態が極めて悪い」にも当てはまらない。
学会の提言が、透析を行う病院に周知されていたかどうかという疑問もある。2016~2017年に全国の病院に行ったアンケート(1407施設のうち510施設が回答)では、透析中止や導入見送りの事例の23%で、学会の提言に従っていなかったという。