モノの価格が上がり続ける経済用語の「インフレーション」。日本では略して「インフレ」と呼ばれることが多いが、今では経済関係だけでなく、何かの大きさや数値が大きくなり続けることに対して使われることが多い。鉄道車両にも起きている「インフレ」について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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「週刊少年ジャンプ」で連載されていた人気マンガ『ドラゴンボール』は、テレビアニメでも大人気となり世界11カ国で放送された。昨年12月に公開された映画『ドラゴンボール超 ブロリー』も日本のみならず、海外でも90の国と地域で公開され、世界での興行収入は100億円を超える大ヒットを記録している。ドラゴンボール人気は、世代・国籍を問わない。
『ドラゴンボール』では、各キャラクターの強さを表す指標として戦闘力が用いられている。サイヤ人のラディッツとの戦いのとき、主人公・孫悟空の戦闘力は300前後。フリーザとの戦いでは、300万から始まり、セルとの戦いでは12億。ストーリーが進むほどに、戦闘力のインフレ化が顕著になった。
近年、鉄道業界でも似たような現象が車両で起きつつある。それを象徴するのが、2019年冬に新京成電鉄が運行を予定している新型車両だ。
新京成電鉄は千葉県の松戸駅から大仏で有名な鎌ヶ谷市、ふなっしー人気により全国区の知名度を誇る船橋市を経て京成津田沼駅までの約26.5キロメートルの路線を有する鉄道会社。千葉県郊外を結ぶ路線ため、年間の乗車人員は1億333万人とそれほど多くない。通勤・通学の動線としてはメジャーではなく、東京圏に住んでいても利用する機会は決して多くない。
その新京成電鉄が発表した新型車両の車両番号は、80000形。途方もない数字のため、鉄道ファンでも「いち、じゅう、ひゃく…」と数えてしまうほど多くの0が並んでいる。
「弊社は京成グループに属しているのですが、以前には北総開発鉄道(現・北総鉄道)に乗り入れをしていました。北総開発鉄道には、弊社のほか都営浅草線や京急電鉄も乗り入れをしています。たくさんの会社の車両が走っているので、識別ができるように新京成の車両番号は頭の数字を8に統一しています。そのため、800形、8000形といった順番で車両番号を振り、新型車両は80000形になりました」と説明するのは新京成電鉄総務人事部広報課の担当者だ。
鉄道車両は時代とともに加減速や速度、低騒音化、省エネ化といったさまざまな部分で性能を向上させてきた。近年では、混雑していても乗り降りがスムーズにできるようにワイドドアにしたり、座って通勤したいという需要に合わせた車両を登場させたりしている。
新京成電鉄の80000形は、以前の車両よりも省エネ性能を向上。また、車内に防犯カメラが設置されたほか、ベビーカーや車いす、荷物の大きな旅行客用のフリースペース空間も設けられている。