平成を彩るアスリートを振り返るとき、大相撲の若貴ブームははずせない。ブームではあったがその強さ、とくに弟の貴乃花の大横綱ぶりは今でも語り継がれる見事さだった。巨漢力士時代に「寄り切り」で勝ち続けたからこそ、真の大横綱だったと、元NHKアナウンサーの杉山邦博氏が「大横綱・貴乃花」について語った。
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大相撲の王道を歩み続けた大横綱です。一切妥協することなく真っ正直に立ち向かう姿勢を貫いた、後世に名を留める名力士であり、平成の相撲ブームに火をつけたのが貴乃花でした。
同じ大横綱として大鵬、北の湖、千代の富士の名前が挙がるが、大鵬と北の湖は同世代の力士の中では大柄な体に恵まれました。しかし貴乃花は小錦、曙、武蔵丸ら200キロを超える巨漢力士の中での土俵でした。ハワイ勢の台頭は相撲の国際化に貢献しましたが、そのパワーを見て角界全体が大型化に走ることになり、技より体に頼る力士が多くなって、相撲が大味になっていった時代でもあったのです。
そんな巨漢力士のパワーに席巻されかねない状況下で、逃げることなく正面から立ち向かったのが貴乃花でした。そういった状況下での22回の優勝は価値があるものだと思います。
大横綱と呼ばれた力士たちは、それぞれに強さの個性がありました。出足鋭い北の湖、左前みつを取って一気に寄る直線相撲の千代の富士が攻撃型なら、左右どちらの四つでも対応した貴乃花は、大鵬と同じく防御も備えた横綱でした。横綱在位429勝中、寄り切りが半数を超える。この記録こそが貴乃花の安定感を証明しています。