臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、新元号「令和」を分析。
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「令和」の時代が始まった。でも何も変わらない。変わったという実感がない。当然といえば当然なのだが、なんとなく取り残されたような…。そんな感じがする人はいないだろうか?
令和元年初日の朝は、「平成」だった一昨日とまるで同じだった。新元号が発表された時の方が今か今かとワクワクしていた。巷の予想とはまるで違った元号は、ラ行のきれいな清音で始まり、明るく柔らかい、それでいて品を感じさせるような音の響きが新鮮だった。「令和」に決まったという号外を求めて人々が殺到していた映像に、時代が変わっていく節目の到来を感じたような気がしたものだ。
この1か月、メディアは盛んに新しい時代の幕開けを強調していた。平成の振り返りやら総括やらの番組が次々に組まれ、あるCMでは、「平成の大晦日」なんてキャッチフレーズが付けられていたくらいだ。微妙なお祝いムードや流れに乗って“新しい時代になった”という晴れやかな気持ちになるだろう、ちょっとしたお正月気分に似たような感じになるだろうと思っていた。だけどそんな感情は何も湧いてこなかった。
自分自身に拍子抜けだ。この拍子抜け、きっと「インパクトバイアス」の仕業だろう。
インパクトバイアスとは、ある出来事が生じた時、自分はどんな感じがするだろう、どのような気持ちになるだろうという感情の強さやその持続時間を過大に見積もる傾向のことだ。元号が変わるという出来事とメディアの盛り上がりを見て、自分の気持ちもアップするだろうと思ったのは、ポジティブなインパクトバイアスである。だが、実際は違っていた。