これまで医療の「検査」と言えば、すでに発症している人の病気を見つけるためのものがほとんどだった。たとえば「がん」なら、画像診断などの検査で疑わしい結果が出たら、細胞を採取して病理検査を行ない、診断を確定する。
だが、これからの時代は、その意味が変わってくるかもしれない。最新の医療検査は、体に異状が発生する前から、その存在を見通せるのだから──。
たとえば、加齢とともに血管内に中性脂肪やコレステロールがたまると、動脈硬化が生じる。そのまま進行すると、血管内にプラーク(血管壁にこびりついた脂肪などの塊)や血栓ができ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが増す。
動脈硬化が原因とされる脳血管疾患や心血管疾患の患者は増加しており、寝たきりになる原因でも脳血管疾患がトップだ。にもかかわらず、初期段階の動脈硬化を発見するのが難しい状況に一石を投じたのが、「LOX-index(ロックス-インデックス)」と呼ばれる血液検査である。東京高輪病院健康管理センター長の古川恵理医師が解説する。
「この検査では、血液中に含まれるあるたんぱく質の量を測定します。それを解析することで、将来的に脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクを数値化したのが、『LOX-index』です」
検査のベースは、国内で約2500人を対象に約11年追跡した研究だ。
「研究結果から、LOX-indexの数値が基準値を超えると10年以内の脳梗塞発症率が約3倍、心筋梗塞発症率が約2倍になることがわかっています」(古川医師)