「独島(竹島)はわが領土」と主張し、小学校の低学年から領土教育に力を入れる韓国では、「日本人が独島のアシカを絶滅させた」という通説がある。が、それは濡れ衣だという。著書『韓国「反日フェイク」の病理学』が話題の韓国人ノンフィクション・ライター崔碩栄氏が、「竹島のアシカ絶滅の真相」を解説する。
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最近の韓国の小中高の歴史教科書を見ると、私が学生だった1980年代との大きな違いを感じる。私の中学・高校時代には教科書で一字も見られなかった「独島」(日本名:竹島)、「慰安婦」などについての記述が非常に「充実」しているのだ。私が学んだ頃の教科書では、「独島」は地理の教科書に名前が記されるだけで歴史の教科書には登場していなかった。そして、「慰安婦」は社会的にも話題にさえなっていなかった。
さらに、近年になって新しく追加された内容がもう一つある。独島に生息していた「カンチ(海驢:アシカ)」に関する内容である。カンチは現在、絶滅状態にある。
カンチという名前は、韓国人にはあまり馴染みのあるものではない。私も2000年代以降になって初めてこの名前を聞いたように思う。そんなカンチがなぜ「生物」や「地理」ではなく「歴史」教科書に載るようになったのか?
韓国の新聞記事を調べてみると、2000年代以前に「カンチ」という名前は、ほとんど見当たらない。カンチという名前が急に韓国社会に広がり始めたのは、島根県議会が2005年に2月22日を「竹島の日」とする「竹島の日を定める条例」を賛成多数で可決した時からだ。韓国が島根県の措置に反発し、「独島は韓国の領土」であることを強調する材料として登場させたのだ。
2005年以降「カンチ」という動物は、韓国のテレビと本を通じて繰り返し報道、宣伝されたために、現在では子供たちや若者たちにはかわいい海の動物として馴染み深い存在となった。絵本や漫画はもちろん、教科書にまでカンチは可愛くてキュートな動物として描かれており、全国各地に建てられた独島体験館(子供たちに独島に関する情報を伝える学習館)にはカンチの模型も置かれている。