『BALMUDA The Light』は、子供から大人まで幅広い年代が使えるデスクライトだ。オーブントースターなどで知られるバルミューダが照明器具を発売するのは初の試み。およそ5年間の開発期間を経て、2018年10月に発売された。約幅191×奥行き264×高さ463mm。カラーはブラック、ホワイト、ベージュで、3万9960円。
きっかけになったのは、代表の寺尾玄さんがわが子の机に向かう姿勢を見たことだった。子供は、机に向かうとき、集中するほどに猫背の前傾姿勢になり、明かりを自らの頭で遮ってしまい、手元が暗くなっていることが多い。「もっと机から目を離して」と注意するものの、気づけば元どおりの前傾姿勢になっている。そこで、姿勢を矯正しなくても子供の目を守ることができるライトを開発しようと決めた。
3年間の構想を重ね、頭が影にならないデスクライトを作るためには、光を直接手元に照らさず反射させ、間接的に照らすというアイディアが生まれた。開発チームが調べたところ、そのアイディアがもっとも活用されているのは、医療用の手術灯だった。
そこで、開発担当者は、手術灯で国内最大手の老舗企業、山田医療照明に見学に向かった。いざ出かけると、家電メーカーというふだんはかかわりのない分野からの来客に困惑の表情を浮かべる山田医療照明の面々がいた。
事情を説明するなかで、山田医療照明の社長は以前からバルミューダの商品を愛用していることが判明。その後、社長同士が意気投合し、共同開発することが決定した。
山田医療照明の技術者たちの力を借りながら、いくつもの困難を乗り越え開発は進められたが、光源の形や大きさ、デザインをどうするかがもっとも大きな課題だった。
頭が影にならないようにするために、LEDライトを上に向け、反射板を使い、斜めに光を反射させるということは決まっていた。しかし、その光を学習机で使うために必要な範囲までムラなく照らす必要がある。
どんなに角度や明るさを調整しても、手前が明るく、奥が暗くなってしまうのだ。開発者が毎日遅くまで会社に残り、光源の研究を行っていたが、ある日、半ばやけくそのような気持ちでLEDを3つ用意し、1つ目の光を覆うような形で配置してみると、これが大正解。斜めから光を当てているにもかかわらず、あたかも頭の上に照明があり、真上から照らされているような光が実現できたのだ。
当初は子供用として開発されたデスクライトだったが、発売してみると老眼の中高年や文章を書く仕事をする人からも注目を集めた。「太陽光LED」が、自然界の本来の色を美しく照らすことから、SNS映えを狙った料理写真の撮影に使用するという意外な使い方も。
高価に思える価格も、家族が机に向かい続ける限り使えるということを考えると、お得な買い物といえるかもしれない。
※女性セブン2019年5月9・16日号