三連単が発売されてから14回の開催で、100万馬券が3回。そう聞くと自ずと予想にも力が入るものである。週刊ポスト誌上で平成競馬をキーワードに『60歳からの「儲ける競馬」』を連載するライター・東田和美氏がNHKマイルカップについて考察した。
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「外車はエンジンが違う」というのを実感するようになったのはちょうど平成が始まった頃だ。2年の朝日杯リンドシェーバー、4年のエルウェーウイン、5年のヒシアマゾン、6年のヤマニンパラダイスなどが立て続けに2歳(当時は3歳)GI馬となり、古馬でもシンコウラブリイやダンツシアトル、ヒシアケボノなどがタイトルを奪取。円高を背景にした攻勢に、国内の生産者は戦々恐々とし、外国産馬の開放に対する根強い反発があった。が、ファンにしてみれば強い馬が、出るレースを制限される状況に対して割り切れぬものがあった。平成8年、そんな思いに圧されるように、それまでダービートライアルとして2000mで行われていたNHK杯がマイル戦として生まれ変わったのがNHKマイルカップだ。
その目論見通り、外国産馬による外国産馬のためのレースとなった。第6回まで勝ったのはすべて外国産馬、上位も外国産馬が占めた。しかし、21世紀になってクラシックが外国産馬にも開放されるようになると、血統やレースぶりから「2400mでは長い」という馬が出てくるようになる。
生産者が懸念していた外国産馬攻勢もクラシックではオークスでローブデコルテが勝ったのみ。このレースも第7回以降、持込のキングカメハメハが勝った以外はすべて内国産馬の勝利。かつては毎年のように海外から良血の種牡馬が輸入されていたが、近年では内国産馬が、種牡馬としても着実に実績をあげている。こと平成の競走馬生産に関しては、外圧に負けなかったといっていいだろう。
平成16年、キングカメハメハが「東上最終便」毎日杯を勝ちながら皐月賞を回避、NHKマイルカップとダービーを勝つ。同じGIなら中山の2000mより府中のマイルを勝った方が種牡馬として価値がある。20年のディープスカイも同じローテーションでの“変則二冠馬”となったがそれが定着したわけではない。マイルを使った後に2400mという選択はリスクを伴うし、やはり歴史の新しいレースより、クラシックの誘惑は何物にも代えがたいのだろう。しかし例えば松田国厩舎は、毎日杯からの参戦で過去3勝、皐月賞上位からこちらに参戦して2着1回3着1回と結果を出しており、そういう意味では、厩舎の“哲学”を感じることのできるレースでもある。
タフで直線が長く、本当の実力が問われるレースといわれている府中のマイルだけに、23回中1番人気が10勝、単勝の3桁(1000円未満)配当は16回にも及ぶ。しかしその割にヒモが荒れており、馬連の3桁配当は2回しかない。三連単が発売されてからの14回のうち4桁(1万円未満)は1回のみで、19年の973万馬券をはじめ100万馬券が3回、10万円以上も6回出ているので意欲は沸く。
今年は桜花賞馬グランアレグリアに加えて2歳牡馬チャンピオンで皐月賞4着のアドマイヤマーズをはじめ5頭がクラシックから参戦してくる。
これまで皐月賞からNHKマイルカップに駒を進めてきた馬は48頭いるが、勝ったのは27年のクラリティスカイだけ(余談だがこの馬の母タイキダイヤは第1回の覇者タイキフォーチュンの妹、父は13年の覇者クロフネという“NHKマイルカップ血統”である)。皐月賞3着からの参戦はタニノギムレット、メイショウボーラーと2頭いるが、ここでもともに3着(タニノギムレットは次走ダービーを勝っている!)。