検査は「治療」の第一歩だが、ひとたび発症すれば治療や薬に費用がかかり、入院や手術で患者の体への負担が大きくなることもある。発見が遅ければ最悪の場合、治療できないケースもある。
そんな状況はあるものの、かつては発症前の兆候をつかむことが困難とされた病でも、発症を未然に防ぐ道が開けてきた。
たとえば、国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学予防研究部長の溝上哲也医師らが開発した「糖尿病リスク予測ツール」を利用すれば、自宅にいながら無料で将来の糖尿病リスクを知ることができる。
このツールは国立国際医療研究センターのホームページで公開されている。パソコンはもちろん、スマホでも利用可能だ。
年齢や身長、体重や血圧、降圧剤の服用の有無などの基本項目を入力すると、「3年後の糖尿病発症リスク」や「同性・同年代の平均との比較」の結果がすぐにわかる。ちなみに費用は無料で検査時間は5分程度。検査前に準備することは、身長、体重、腹囲、血圧などの測定と、健康診断の受診だ。
最大の特徴は、糖尿病のリスク予測に「AI(人工知能)」を用いたことだ。開発者の溝上医師が指摘する。
「このツールでは3万人分の健康診断データをもとに、糖尿病になるリスクをAIに予測させています。糖尿病の予測にAIを絡めたのは、私の知る限り世界で初めて。通常の統計モデルなら『年齢が高いほうがリスクが高い』『肥満者はハイリスク』などといった理解しやすいロジックで予測をしますが、AIによる予測は人間にはできない複雑な分析ができる。そのため、予測精度は従来のものより優れています」