国内

「上級国民」というネットスラングの大拡散が示す日本人の心中

スマホの普及であらゆる生活が便利になったが…

ネットで使われるスラングの影響は大きくなっている

 時代とともに変化するのは言葉の常だが、新たな言葉が人口に膾炙される過程においては相応の理由があると見るべきだろう。コラムニストのオバタカズユキ氏が指摘する。

 * * *
「上級国民」というネットスラングの拡散が止まらない。もとは4月19日に、東京の東池袋で自家用車が暴走、歩行者10人をはね、母子2人を死亡させた事故の運転者を指した言葉だが、いまやその範囲を大きく超えて、使い続けられている。

 たとえばツイッターの世界では、10連休のゴールデンウィークと絡めて、こんなつぶやきが方々に散らばっていた。

〈モノレールが連休を旅行で過ごす上級国民様で満たされておる〉
〈10連休を取れるのは全体の3割。そんな能天気に生きて居られるのは、上級国民だけってか〉
〈(アフリカ旅行を勧める朝日新聞公式アカウントのツイートに対して)いい加減にしろ!韓国やグアム程度ならばまだしも、幾ら10連休の旅行でもアフリカに行くのに一体幾らかかると思っているのだ?そんな上級国民の為の記事より、この国を変える為に収入が激減して苦しむ日雇いや非正規の怒りを紙面にしたらどうだ?〉
〈10連休なんて上級国民様の催しでしかないのです、下級国民は労働奉仕なのです(震え)〉

 休日祝日関係ないフリーランスの私としても「そうだそうだ」という気分だが、それにしても「上級国民」はすでにもう、普通名詞のような使われ方をされている。日本には一部の「上流国民」とその他大勢の「一般国民」や「下流国民」しかいないみたいな構図が、いつの間にかできあがっているようであり、そして、この言葉を使用する人々には、基本的に、疲れていて、嘆いていて、捨て鉢になっている印象がある。

〈給料総額15万、週6日働いて稼働日数月25日。盆正月関係なし。ほとんど奴隷と同じです。きっと公務員や、NHKに勤めてる上級国民の皆さんには理解できないんだろうな〉
〈77歳で新聞配達のバイト。そうせざるを得ない人々はますます増えるだろう。上級国民が左ウチワでエンジョイしている一方で。それでも安倍支持率は下がらず、地方選でも自民が議席を伸ばしている。政権が変らなければ、庶民は毟り取られていく一方だと思うが、みんながそれでいいなら仕方ない〉
〈平成がいい時代だったと言えるのは、よほどの上級国民だけなんじゃないの? 災害はやたらめったら多いし、少子化進むし、賃金は上がらないのに戦争準備してる。令和は確実に戦争があるわね(>_<)〉
〈次、生まれ変わるなら人間じゃなくて蝉が良いな 上級国民に×されずに済むし〉

 この問題は当初、事故で多くの死傷者を出しておきながら、運転手が逮捕されず、マスコミからは「さん」づけで呼ばれるのはおかしいではないか。それは元高級官僚という「上級国民」だからじゃないか。という疑問と怒りの文脈で使われていた。さらに事故の2日後、神戸のJR三ノ宮駅前で市営バスが歩行者2人はね、2人を死亡させるあらたな事故がおきた。そのバスの運転手は駆けつけた警察官により現行犯逮捕され、マスコミ「××容疑者」という呼び方で事件を報じたため、バス運転者のような「一般国民」はすぐさま罪人扱いで、「上級国民」のほうは忖度されてお咎めなしなのか、と怒りにさらなる火がついた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
ファンから心配の声が相次ぐジャスティン・ビーバー(dpa/時事通信フォト)
《ハイ状態では…?》ジャスティン・ビーバー(31)が投稿した家を燃やすアニメ動画で騒然、激変ビジュアルや相次ぐ“奇行”に心配する声続出
NEWSポストセブン
NHK朝の連続テレビ小説「あんぱん」で初の朝ドラ出演を果たしたソニン(時事通信フォト)
《朝ドラ初出演のソニン(42)》「毎日涙と鼻血が…」裸エプロンCDジャケットと陵辱される女子高生役を経て再ブレイクを果たした“並々ならぬプロ意識”と“ハチキン根性”
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
朝ドラ『あんぱん』に出演中の竹野内豊
【朝ドラ『あんぱん』でも好演】時代に合わせてアップデートする竹野内豊、癒しと信頼を感じさせ、好感度も信頼度もバツグン
女性セブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
高校時代の広末涼子。歌手デビューした年に紅白出場(1997年撮影)
《事故直前にヒロスエでーす》広末涼子さんに見られた“奇行”にフィフィが感じる「当時の“芸能界”という異常な環境」「世間から要請されたプレッシャー」
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下は秋篠宮ご夫妻とともに会場内を視察された(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
《藤原紀香が出迎え》皇后雅子さま、大阪・関西万博をご視察 “アクティブ”イメージのブルーグレーのパンツススーツ姿 
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン