昨年、男性同士の恋愛を描いた『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が大ヒットしたのが記憶に新しいが、今クールのドラマでも、LGBTを題材にした作品が増えている。その背景をテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今春のドラマでスタートして1か月が過ぎようとしていますが、最大のモチーフとなっているのはLGBT。
ツイッターの世界トレンド1位にもなった話題作『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のほか、シリーズ第3弾も人気をキープする『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)、古田新太さんがゲイの教師を演じる『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)、強烈なタイトルに相反するピュアな世界観が魅力の『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)、人気海外ドラマのリメイク『ミストレス~女たちの秘密~』(NHK)の5作でLGBTがモチーフとして扱われ、うち4作は主人公が当事者です。
なぜ今、これほどLGBTをモチーフにしたドラマが量産されているのでしょうか?
◆「生きづらさ」が明快で根深いLGBT
このところドラマに限らず、テレビ番組全般のキーワードとなっているのは、さまざまな人柄や生き方の尊重。年齢、性別、職業、学歴、趣味、嗜好などの違いを平等に扱い、「自分らしく生きる姿を描く」「マイノリティにスポットを当てる」というコンセプトの番組が増えています。
ドラマでも、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が、契約結婚するヒロイン、高齢の処女、結婚に否定的な男性、家族を溺愛する男性、ゲイ、シングルマザーなど、それぞれの生き方を尊重するような物語で大ヒットして以降、この傾向が加速。今春も、周囲を気にせず定時退社を続ける女性を描いた『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)、車椅子生活の男性が主人公の『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)、同じマンションに住むさまざまな住人を描いた『あなたの番です』(日本テレビ系)が放送されているように、それぞれの立場にいる人が、生きづらい世の中を自分らしく乗り越えようとする姿をフィーチャーしています。
なかでも、生きづらい理由がわかりやすく、根が深いのはLGBT。好奇の目、上から目線、微妙な距離感、露骨な特別扱いなどに直面しながらも、自分らしく生きる姿が視聴者の共感を呼び、困難を克服したときのカタルシスはひとしおなのです。
たとえば、今春最大の話題作となっている『きのう何食べた?』は、40代のゲイカップルを特別視せず、描いているのは何気ない日常生活のみ。その中心にあるのが2人で挟む食卓という点も含めて、LGBTはもちろん、それ以外の人々からも共感を誘っているのでしょう。
また、『きのう何食べた?』の内野聖陽さんが「こういう役はほとんど経験がないので、新鮮に感じました」「面白いドラマになりそうだなっていう予感をすごく感じて、二つ返事で受けました」とコメントしているように、俳優たちにとってLGBTは演じがいのある役。「演技の幅を見せ、視聴者のイメージを広げ、新境地を見せて評価を受けやすい」など、制作サイドにとってはキャスティングに迷うことはあっても、困ることは少ないものです。
◆一年前にもLGBTのドラマが大量放送