奥ゆかしさや慎み深さが美徳とされた日本は「今は昔」か。クレームや理不尽な要求を繰り返す“モンスター”は格段に増えた。クレーム電話がつきもののコールセンターでも、寄せられるクレームは年々増加している。その要因の1つがインターネットの台頭と普及だ。近年あらゆることがインターネットで行えるようになったため、実店舗の数を減らし販売窓口をネット上に移行している企業も多い。
今や顧客からアクセスできる唯一の窓口がコールセンターという企業も多く、クレームやトラブルが起きた場合は、まずコールセンターに連絡することになる。そのためコールセンターでは、突然客から怒鳴りつけられることも日常茶飯事だ。
ひと昔前のクレーム対応は、ひたすら謝罪だったが、今はしっかりと「言い返す」流れに。貴重なオペレータを守るべく法的手段も取り入れるようになったという。そこで、クレーマーからオペレータの心を守る独自メソッドを開発した『督促OL』こと榎本まみさんに、客からのクレームや上司からの理不尽な要求などへの言い返し方を教えてもらった。
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一昔前、私が新卒でコールセンターに入社した頃は、クレーム対応といえばひたすら謝罪を繰り返すことが一般的だった。2~3時間怒鳴られても言い返さずそれに耐え、なんとか相手の気持ちに寄り添い解きほぐす。罵倒されても恫喝されても、ただただ我慢していた。
ちなみにコールセンターのオペレータの仕事は「感情労働」の一つとされているが、2015年の韓国での調査で、コールセンターのオペレータは「最もストレスが高い感情労働の職種」であると認定された。コールセンターのオペレータというのは、それだけ感情の抑圧が求められる仕事なのだ。
けれど近年、コールセンター業界では変化が起こっている。それは、不当なクレームに対しては「要求を毅然と断る」「司法手段に訴える」といったように、謝罪以外の対応を行うコールセンターが現れたのだ。
例えばクレーマーの中には何度断ってもしつこくコールセンターに電話をかけ、些細なことで難癖をつけオペレータを詰問することを繰り返している顧客もいる。そこでとある保険会社のコールセンターでは、何度もクレーム電話をかけてくる顧客に対しては弁護士へ対応を委任するようにした。これにより、コールセンターでオペレータが何時間も怒鳴られ続けるということが無くなり、その時間を正当な業務に充てられるようになった。
カスタマーハラスメントという言葉も最近はよく聞くようになった。オペレータは今まで我慢する・耐えるということを強いられてきたが、それが少しずつではあるが、「オペレータだって、理不尽な要求にはNOと言っていいのでは?」という空気に変わってきているのだ。
そして、コールセンターに限った事ではなく、社会全体で少しずつ「弱い立場であっても理不尽なことにはNOと言おう」という空気が生まれているように感じる。けれどやはり弱い立場で強者に言い返すことは難しい。ビジネス的に当たり障りなく、不当な要求に言い返すにはどうすればいいのだろうか。ここではコールセンターで使用しているテクニックを例に、弱い立場にいる人が、強い立場にいる人に言い負かされないための返し方を紹介したい。
◆クレームには反射的に謝らない
顧客からクレームを受けたとき反撃するためにまず大切なのは、反射的に謝らないことだ。