世相を見事にとらえたドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系列火曜午後10時~)が話題だ。初回は、定時帰りを信条とするヒロイン・東山結衣(吉高由里子)が、同世代の同僚で残業をいとわない、「無遅刻無欠勤女」の異名を取る三谷佳菜子(シシド・カフカ)と、第2話では、育休から復帰して人が変わったように働くワーキングマザー・賤ヶ岳八重(内田有紀)と向き合った。
初回9.5%、第2話10.4%という視聴率の数字以上にネットでは話題になっており、「『定時で帰ります』って、なかなか言えないよね」「残業している人も成果を出したい思いは同じだから痛々しい」などという声もある。
ヒロインの東山は定時の午後6時には会社を出て、行きつけの「上海飯店」に繰り出し、6時10分までに入店すればビールが半額になる「ハッピーアワー」に滑り込む。そんなルーティーンを自分に課すことで、日々の仕事のモチベーションを上げようとする。彼女のように、実践したことで何かよい効果が得られなければ、定時帰りは続けられないだろう。
「実は東山さんには『ハッピーアワー』以外にもいいことが起こっている」というのは、編集プロダクション勤務の30代ライターT氏。T氏は徹夜仕事をするライターが多いなかで、定時帰りを実践した結果、こなせる仕事量が飛躍的にアップしたという。
「彼女はパソコンに『やることリスト』として付箋を貼り付け、テキパキと業務をこなしています。ネット上では『要領がいい人だから定時で帰れる』と書いている人もいるけれど、原因と結果が逆。要領がいいから定時で帰れるのではなくて、定時で帰ろうとしたから要領がよくなった。東山さんも最初は普通の人だったでしょう」
明星大学特任教授でモチベーション研究を専門とする菊入みゆき氏は、課せられた仕事量と時間の関係についてこう指摘する。
「イギリスで行われた研究では、人は例えば午後5時までだと言われると、2時ぐらいに終われる仕事でも5時までかかるように仕事を増やしてしまうという結果が出ている。人間にはそういう行動特性があることがわかっているのです。定時までに終わらせられる仕事でも、『明日までにできればいいや』と思っていると、本当に明日までかかってしまうのです」