平成時代が終わりを迎えても、「女性活躍」の推進は思うように進まない。その要因のひとつとして、意外にも「身近な人からの“嫉妬”もある」と指摘するのは、同志社大学政策学部教授の太田肇氏である。一体どういうことなのか。
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政府は2020年までに女性管理職の比率を30%まで高めるという目標を掲げているが、わが国の2018年時点における女性管理職比率は12%にすぎない。この数字は先進7か国のなかで最低である。役員になるとその傾向はいっそう顕著であり、わが国では女性の比率がわずか3%台にとどまっている(国際労働機関ILO調査)。
女性のキャリアには、「ガラスの天井」と呼ばれる見えない壁があるといわれる。女性が登場する紙幣が、次回もまた5000円札であることから、「やっぱり女性は1万円札の顔にはなれないのか」と皮肉る人もいる。
女性の活躍、昇進を阻む障害としてしばしば指摘されるのは、わが国特有の残業の多さや転勤など、家事・育児との両立を困難にする勤務条件に加えて、社会全体に根強く残る性別役割分業の意識や女性に対する差別意識である。それが「ガラスの天井」の正体だというわけである。
しかし、単なる差別意識や偏見だけが原因ではなさそうだ。
先日、新しく管理職になった女性を対象にした研修会で、彼女たちが働くうえで直面している問題について話し合ってもらった。すると、周囲からのやっかみと思われる仕事の妨害や嫌がらせが予想以上に多いことが語られた。
◆「敵」は身近なところに
意外な人からの嫉妬もある。女性の活躍を推進するよう常々口にしている男性管理職が、部下の女性が昇進して自分の地位に近づきそうになったら態度を一変させ、根拠のない理由をつけて昇進に反対されたという話に多くの人がうなずいた。
さらに大きな反響を呼んだのは、ある女性が「課長になって早朝出勤や残業が増えたのに、これまでどおり夫の食事や着替えの用意をさせられる」と不満を漏らしたときだ。
周囲からは「実は私も……」という声が次々にあがり、その場がちょっとした興奮状態になった。そして、「管理職に就いてから理由なく夫にきつく当たられるようになった」とか、「課長だからといって思い上がるな」と嫉妬心をストレートにぶつけられたという体験談も語られた。
出世できない夫から嫉妬されるのならまだわかる。だが、聞いてみると意外にも夫自身も管理職に就いているケースが多かった。