市の調査で、川口駅から通勤者のうち約3割が池袋駅・新宿駅・渋谷駅方面に通勤していることがわかった。川口駅から池袋駅・新宿駅・渋谷駅方面へアクセスするためには、一駅隣の赤羽駅で埼京線などに乗り換える必要がある。調査結果を踏まえ、川口市は高崎線や宇都宮線の停車を要望せず、湘南新宿ラインだけの停車を求めていた。
しかし、2015年に上野東京ラインが開業すると、状況に変化が生じる。それまでの湘南新宿ラインだけを要望していたが、川口市は中距離電車の停車、つまり高崎線や宇都宮線の停車も含めた要望へと変更したのだ。
川口市の要望は、川口駅の利用者にしかメリットがないように感じる。川口駅の利用者にしかメリットがなければ、中距離電車の川口駅停車は実現が難しいだろう。
また、高崎線・宇都宮線・湘南新宿ラインは川口駅の一駅隣にある赤羽駅にも停車する。赤羽駅と川口駅、2駅連続で停車するダイヤが組まれると、高崎線・宇都宮線・湘南新宿ラインのウリである速達効果が薄れてしまう。それも、川口駅停車の実現を阻む要因のひとつになっている。
しかし、川口駅停車は高崎線・宇都宮線・湘南新宿ライン全体にメリットがあると川口市都市計画部都市交通対策室の担当者は強調する。
「川口駅の北側には、2003年までサッポロビール埼玉工場がありました。工場跡地は再開発で住宅や商業施設、公園などになっていますが、今でも貨物列車の引込線が一部に残っています。その引込線を活用することで、川口駅を始発とする高崎線・宇都宮線・湘南新宿ラインのダイヤが設定できます。最近は、山手線でトラブルが起き、それが上野東京ラインなどに波及して、広範囲で電車が遅延することは珍しくありません。中距離電車の川口駅始発を設定できれば、高崎線・宇都宮線・湘南新宿ラインでトラブルが起きても区間運転で対応することが可能です。つまり、川口駅に中距離電車を停車させることは、輸送障害が起きた時のリスクヘッジにもなるのです」(同)
川口市は、今年度の予算に調査費2750万円を計上。そこからも、川口市の本気度が窺える。
一方、埼玉県や川口市といった行政が働きかけても、JR東日本は「現段階では何も決まっていないので、こちらからできる話はありません」とつれない反応に終始している。
中距離電車の川口駅停車を実現するには、まだ時間を要するだろう。川口の悲願は成就するのか?