関東のとある寺院を、喪服に身を包んだ4人家族が訪れていた。時刻は午前11時。母は遺影を持ち、3人の子供たちはそれぞれ遺骨、位牌、卒塔婆を持っている。4人が向かったのは、木本家と刻まれた墓石だった。その新しい墓石は黒光りし、色とりどりの花が供えられ、果物や和菓子が置かれている。線香を手向ける母子の面持ちは神妙だった。
西城秀樹さん(享年63)の突然の死から1年。愛する人との別れを歌った西城さんのヒット曲『ブルースカイ ブルー』そのものの晴れ渡った空の下、西城さんの納骨が終わった。そして、家族は新たな一歩を踏み出した。
5月14日、東京・豊洲にあるライブエンタテインメント専用シアター「チームスマイル・豊洲PIT」に秀樹ファンが駆けつけた。
その日は、4日間かけて行われる西城さんのフィルムコンサート&写真展『HIDEKI SAIJO FILM CONCERT 2019 THE 48』の初日。西城さんが音楽賞で受賞したトロフィーや着用した衣装、愛用のギターなどの品々と写真が展示された会場ロビーは、人だかりができていた。
コンサートが始まり、貴重なライブ映像が迫力ある音量で流れると、客席で涙ぐむファンもいた。
西城さんの一周忌にあたる5月16日には、CD5枚、DVD1枚、写真集などが入った集大成アルバムのオールタイムシングルBOX『HIDEKI UNFORGETTABLE-HIDEKI SAIJO ALL TIME SINGLES SINCE1972』が発売される。ファンクラブでの予約受付は終了しており、予約が殺到したという。
その一周忌を前に、納骨を終えた西城さんの妻・美紀さんがこの一年を振り返る。
「ゴールデンウイークの終盤に身内だけで納骨を執り行いました。無事に終えられ、ホッとしたような気持ちがある一方、寂しい気持ちもあります。あの日から一年…本当に、あっという間でした。
今年は4月になってからも寒い夜があって、そんな時にはふと、入院している秀樹さんの所へ通ったことを思い出したりもしました」
西城さんが倒れたのは昨年の4月25日。家族で夕食をとっている時のことだった。
「意識が戻ることはありません」
救急車で運び込まれた病院の医師からそう伝えられたが、美紀さんはその言葉をすぐに理解できなかった。それでも美紀さんと子供たちは病院に毎日通った。「もって1週間」といわれた余命は家族の支えで伸びたが、5月16日、意識が戻ることなく旅立った。