音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、古典の正統派・柳家三三と荒唐無稽な新作の三遊亭白鳥、正反対の二人会についてお届けする。
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古典の正統派・柳家三三と荒唐無稽な新作の三遊亭白鳥。正反対の彼らが2009年から始めた二人会「両極端の会」の第13回が4月1日に新宿の紀伊國屋ホールで行なわれた。
三三から「実在する人物の噺を」とリクエストされた白鳥が演じたのは、病み上がりの立川談志がリハビリとして落語協会の若手「柳家ミミ」と池袋演芸場で三夜連続の二人会をやる『聖橋』。初演は2010年4月の「両極端の会」で、ちょうど現実世界での談志が8か月の入院生活から復帰した時期だった。
談志は『文七元結』のリレーを提案。前半をミミが語り、吾妻橋の場面で談志が登場して二人芝居をやり、後半を談志が語るという企画だったが、「古典をまっすぐに演る若手」という談志の期待に反し、ミミは「爪痕を残したい」とクサい新演出を披露。激怒した談志は初日、二日目と高座に出てこない。談志に「身投げの了見になれ」と言われたミミは、聖橋で死のうとする三遊亭白鳥に遭遇、それをヒントに工夫を凝らし、三日目に談志を唸らせる……。
『淀五郎』を元ネタに『中村仲蔵』のパロディも交えた爆笑編。ミミ以外の設定で演ることもあったので、終演後の演目表では『聖橋~ミミちゃん編~』とされていた。
白鳥から三三へのリクエストは、「古典から新作になる噺」。三三は「お前さん、起きとくれ」と『芝浜』を始めたが、魚屋が芝の浜で拾ったのは、たらいに乗って海に浮かんでいたパンダの子供。平成31年から天保10年にタイムスリップしてきたのだという。