家具やインテリア雑貨を手がけるニトリホールディングスは平成の30年を通じて右肩上がりの成長を遂げた。同社を率いる似鳥昭雄会長(75)は“経済予測の達人”として財界に名を轟かせている。その手腕はバブル崩壊やリーマン・ショック時でさえ会社を成長させたことにも表れている。1989年に上場した当時は店舗が18店、売上高は132億円だった。30年後の2019年2月期は、店舗が576店、売上高で6081億円になった。
──業界の垣根を越えた戦いが熾烈さを増せば、ただでさえ人手不足の昨今、ますます優秀な人材の奪い合いが激しくなりそうです。
似鳥:当社のビジネス構造の実態は小売業というより“大売業”とでも言いますか、要は、商品の開発や生産、物流を含めた商社機能、それに販売の小売りまで、すべて自前で行う一気通貫の事業モデル。そこで成長企業という点以外に、商社のように様々な職能が経験できるということが人財確保の上では当社の強みになってくると思います。
ユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正社長が掲げた、新卒の初任給を一挙に2割増しにするという方針も驚きましたが。それくらいでないと、優秀な人財を確保するのは難しい。
──様々な業界でプロ経営者を招聘したり、役員や幹部も異業種からスカウトする企業が増えていますが、ニトリはどうですか?
似鳥:当社の松元史明副社長も、昨年9月、日産自動車副社長から招き入れた人財です。彼は日産時代、生産管理や海外経験で豊富な知見を培っているので、非常に力になっています。当社では20人いる執行役員のうち生え抜きは6人。スカウト組が7割を占めています。
トップの重要任務は、優秀な人を役員や幹部としてスカウトすること。そういう人財は、新卒でゼロから育てる定期採用では間に合いません。