現代人にとって、「圧倒的に不足している油」と「摂るべきではない油」が存在することをご存じだろうか。摂取バランスが乱れた状態が続くと、重大な病気の原因につながり、アレルギー症状を悪化させるリスクが高まると言われている。
油には、いくつかの種類がある。たとえば、大豆油やオリーブオイルなど植物由来の油は常温で液体の『不飽和脂肪酸』を多く含む。また、バターやラードなど固体の油脂は動物性で『飽和脂肪酸』を多く含む。
さらに不飽和脂肪酸は、α-リノレン酸などが含まれるオメガ3系脂肪酸と、リノール酸などのオメガ6系脂肪酸、オレイン酸などのオメガ9系脂肪酸に大別される。そのうち、オメガ3とオメガ6は体内で作れない「必須脂肪酸」に該当する。
オメガ3は、抗酸化作用や動脈硬化予防、血圧を下げるなどの作用があり、オメガ6は細胞組織の維持に必要な成分となっている。これら必須脂肪酸は体内で作ることができないので、ある程度積極的に摂取する必要がある。
一方で、動物性の油に多く含まれる飽和脂肪酸については摂りすぎると、悪玉コレステロールが増えたり、さまざまな病気の原因につながることがわかっている。食品工学が専門の東京農業大学教授・高橋信之さんはこう話す。
「過剰摂取した飽和脂肪酸は、小腸や大腸で炎症を引き起こすきっかけになります。体内で炎症が起こると、糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、ひいては動脈硬化を起こすリスクが高まります」
血管がしなやかさを失って硬くなる動脈硬化は、脳梗塞や心筋梗塞など重大な疾患につながる健康の大敵だ。ならば、植物油だけを摂るようにすれば安心だろうか。東京工科大学応用生物学部教授の遠藤泰志さんはこう語る。
「飽和脂肪酸が不足すると細胞膜がスムーズに機能しなくなります。しかし、飽和脂肪酸は油そのものだけでなく、肉や乳製品などにも豊富に含まれていて、現代の食生活において不足することはほぼありません。むしろ、過剰摂取で肥満につながる恐れが大きい。
また、ココナッツオイルやヤシ油など、亜熱帯植物が原料の油にも飽和脂肪酸が豊富に含まれているので、一概に“植物油=不飽和脂肪酸”とは言い切れません」
典型的なのが、アブラヤシを原材料とした「パーム油」だと高橋さんが指摘する。
「スナック菓子に書かれている『植物油脂』というのはパーム油のこと。コストが安く、工業的に大量に生産できるので、お菓子や加工食品にはほとんどパーム油が使われています。加工食品ばかり食べていると、パーム油を摂取し続けていることになり、体に悪影響です」