古来、日本人は貴重な栄養源としてさまざまな昆虫を食べてきたと考えられている。文献が残っている江戸時代の史料では、イナゴや蜂の子、蚕のさなぎ、セミなどが日常的に食べられていたことが記されている。特にイナゴは稲を食べる害虫であるため、稲作の開始以来、水田のある地域ではどこでも駆除した後は食べていたという。
明治時代になって食糧事情が改善されたり西洋の食文化が流入したりしたことで、昆虫は日常的に食べるものというより、現在は伝統的な郷土料理としての立ち位置になり、場合によっては珍味としてお土産ぐらいでしかお目にかかれなくなった。
その風向きが変わったきっかけと言えるのが、2013年5月、国連のFAO(食糧農業機関)が出したあるレポートだ。その内容は、世界の人口増加にともなう将来の食糧危機の打開策として、昆虫を食事あるいは家畜の飼料として活用することを勧めるというものだった。
このレポートに世界中が驚き、メディアがこぞって取り上げたことで、それまで埋もれていた昆虫食が脚光を浴び始めている。少し前まではお笑い芸人が罰ゲームとして食べさせられる“ゲテモノ”扱いだったが、近年では高たんぱく低脂肪の“スーパーフード”としての認識が高まりつつあり、味も相当改善されてきているというのだ。
百聞は一見、いや、一食に如かず。まず食べてみようではないか、ということで向かったのが、東京・台東区にある昆虫食専門店「TAKEO」だ。東京メトロ・稲荷町駅を出て数分歩くと、「昆虫食はこちら」の外看板が見えてきた。店舗を覗き見てみると、お、客がいる!