元会長のカルロス・ゴーン被告が逮捕・起訴されたことで混乱の続く日産自動車の経営。日産の筆頭株主でアライアンス(提携)を組むフランスのルノーは日産に度々「経営統合」を迫っているが、それを拒否している西川廣人氏は“社長続投”の方針を決めた。果たして、このまま日仏連合の関係を維持することはできるのか。佃モビリティ総研代表の佃義夫氏がレポートする。
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脱ゴーン体制で新たな経営の方向を目指す日産に対し、提携先の仏ルノーは仏政府の意向で「経営統合」という牙を剥いてきた。しかし、日産はこの経営統合に反発しており、それ以上に苦境に陥っている本業の業績回復が当面の最大課題となっている。
20年間にわたる日産とルノーのアライアンス関係は、ルノーから日産再建に送り込まれたカルロス・ゴーン元会長の長期支配が終焉を迎える中で、三菱自動車を含めた日仏自動車連合の新たな方向づくりが求められている。
そんな中、日産が5月14日に発表した2018年度業績と2019年度業績見通しは、非常に厳しいものとなった。2018年度の営業利益は前期比45%減の3182億円で営業利益率は2.7%と大きく低下した。日産の営業利益は10期ぶりにルノーを下回るものとなった。さらに今期(2019年度)の連結純利益予想は前期比47%減の1700億円に落ち込むことを見込んでいる。
ゴーン体制でのグローバル拡大路線のツケが業績不振となった形で、とくに北米事業の落ち込みが大きい。「業績低迷からの脱却が再優先課題だ」と西川廣人・日産社長は、拡大路線からの転換でリストラも断行して収益性重視で立て直しを急ぐ方針だ。
カルロス・ゴーン元会長の突然の逮捕から半年が経過する中で、ゴーン元会長の“私物化”による不正容疑は、裁判の長期化が予想されている。これは今後の司法判断に委ねることになるが、すでに日産・ルノーともに脱ゴーンで新たな舵取りが切られている。
ルノーは15%を出資している仏政府からミシュランCEOのジャンドミニク・スナール氏を新会長に、ティエリー・ボレロ新CEOを内部昇格させてゴーン体制から脱却している。
一方、日産はゴーン元会長の逮捕の責任論で進退を求められた西川社長が「新たなスタートを切って、立て直しを進めることで、しかるべきタイミングでバトンタッチしたい」と6月の定時株主総会以降も続投となる。株主総会では、西川社長の留任とルノーからスナール会長とボレロCEOが新たに日産取締役陣に加わることになる。
そこで問題となるのは、ルノー側が日産に度々提案している経営統合の意向である。