外反母趾というと、若い女性がハイヒールを無理に履いて起こるイメージがあるが、実は高齢者の問題でもある。ゆるい靴を選んで履くことでも引き起こされる高齢者の外反母趾は、元気な歩行を阻む大きな課題なのだ。
医療機関での外反母趾の治療法には、関節の矯正具をつける方法や薬物療法、手術で元の形に戻す方法もある。足のナースクリニック代表一般社団法人日本トータルフットマネジメント協会会長の西田壽代さんはこう語る。
「高齢者の場合はベースに足の筋肉の衰えがありますから、完治というよりも痛みを改善し、快適に歩ける状態を維持することを目標に。日常的にしっかり歩くことが、予防や悪化防止になります」
そんな観点から家で行うマッサージ法を教えてもらった。
「高齢者は筋肉が硬くなっていますから、ほぐして動きをよくすることが大切です。まず入浴時の湯船の中やお風呂上がりに、足の指をくるくる回すことから。特に硬くなっているのは、足の骨と骨の間。骨の上に手指を添えて、やさしく上下に動かしてほぐします。動かないほど硬くなっている場合は、骨と骨の間を指でなぞるようにさすることから始めましょう」
実際にやってみると、思いのほか気持ちがいい。足の細部の筋肉は意識しないとほぐせないので、高齢者でなくても“凝っている”状態なのだ。
「自分でできれば気軽に行えますが、家族がやってあげれば心地よさはひとしお。マッサージ効果はもちろん、触れてもらうと安心感が違います。高齢者施設などでフットケアを行うと、多くの高齢者は足がむくんでいることに気づきます。動かず、足のポンプ機能が衰えて循環が悪くなっているのです。
そんなかたがたは、爪を切る作業で足指を押さえるだけでも循環が促されるようで、むくんだ足が、爪切りが終わるころにはしわしわになることもあります(笑い)。足をマッサージすると、普段無口な人が機嫌よく話し始めたり、気持ちよさそうに眠ってしまう人も。
心身にとって足のケアがいかに大切かを実感します。ご家族間でもぜひやってみてください。難しいテクニックは不要。手のひら全体を使って、ゆっくりさするだけでもよいのです」
マッサージの際、保湿クリームの使用もおすすめだ。高齢になると皮膚が乾燥気味になり、バリア機能が落ちる。かゆみが出るほか、かかとがひび割れたり、ちょっとしたことで傷になったりするという。