「はい、お薬出しておきますね」。診察室での何気ないやり取りで処方される薬を、私たちは信じてのむほかない。でも、その病気や痛みを治す薬は1種類だけじゃない。効き目がない、体質に合わない、副作用がしんどい──そんなときは、思い切って薬を替えることで、症状が緩和することもあるという。
しかし、薬の選択肢が少ない場合もある。
女性ホルモンの分泌量が減る閉経後は、コレステロール値が上がりやすい。高血圧と並んで、処方薬を服用している人の数は多く、60才以上の女性のうち4人に1人が薬をのんでいるというデータもある。コレステロールの薬は選択肢が少ない。
瀬戸循環器内科クリニック院長の瀬戸拓さんが解説する。
「コレステロール値を下げる薬は7種類ほどあります。現在は肝臓でコレステロールを合成する際に必要な酵素の働きを阻害する『スタチン』(HMG-CoA還元酵素阻害薬)という薬が最もポピュラーです。当院に来る患者さんには、第一選択としてまず勧める。現状では、確実にコレステロール値を下げる薬は、スタチンだけと言っても過言ではありません」
スタチンの中でも、スタンダードなものや効果が特に強いものなど、数タイプに分かれるため、どの薬を選ぶかを主治医が決め、処方するのが一般的なのだそう。
「ただし、まれにですが、『横紋筋融解症』という副作用が現れることがある。筋肉を構成する骨格筋細胞に融解や壊死が起こり、その成分が血液中に流出してしまうもので、腎臓に負担がかかり尿が出にくくなるなどの腎障害を起こす。スタチンの処方と並行して検査を行い、副作用が心配な場合は『エゼチミブ』(小腸コレステロール輸送体阻害薬)という薬を使います」(瀬戸さん)
しかし近年、二択だった高コレステロール薬に新たな選択肢が生まれている。
「スタチンとエゼチミブを併用してもコレステロール値が下がらない遺伝性の『家族性高コレステロール血症』の患者さんなどに使うかなり特殊なものですが、『PCSK9阻害薬』という注射薬も開発されています」(瀬戸さん)
※女性セブン2019年6月6日号