令和初の国賓として来日しているトランプ米大統領。安倍首相との首脳会談では対北朝鮮問題についても話し合われた模様だが、安倍首相は「日米の立場は完全に一致している」と述べるばかりで、肝心の拉致問題に関しては何ら具体的な解決策も示さなかった。果たして米国の“後ろ盾”はどこまで拉致問題の解決に有効なのか──。ジャーナリストの宮田敦司氏がレポートする。
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ドナルド・トランプ米大統領夫妻が、イラン情勢が緊迫化するなか5月25日~28日までの日程で国賓として日本を訪問した。トランプ氏は訪日にあたり「貿易、軍事、北朝鮮問題」について話し合うと表明していたように、会談で重点的に話し合われたのは貿易の問題であり、貿易赤字削減の問題だった。
日本国民が期待している拉致問題の優先順位は低く、安倍首相の発言もこれまでの繰り返しで終わってしまった。拉致被害者家族とトランプ大統領との面会も短時間だったとはいえ、今回で2回になる拉致被害者家族との面会により、日本側の立場をさすがのトランプ大統領も理解したはずだ。
トランプ米大統領は訪日中に立て続けにツイッターへ投稿している。安倍首相とのゴルフのプレー中である27日10時32分には、
〈北朝鮮は数発の小さな兵器を発射し、わが政権の一部の人々などを動揺させているが、私は気にしない。金正恩朝鮮労働党委員長は私との約束を守ってくれると信じている〉
とツイッターへ投稿している。プレー中に安倍首相と弾道ミサイル発射の件が話題になったのだろうか。
◆具体性なしの解決策
27日の首脳会談でも、安倍首相は日頃から拉致問題を「あらゆる機会を捉えて解決する」と公言していることから、首脳会談でも拉致問題について突っ込んだ話し合いが行われたはずだ。
前述したように、トランプ氏は首脳会談の後で拉致被害者家族と面会した。トランプ氏は被害者家族の切実な思いを聞いた後、両首脳で記者会見に臨んだわけだが、残念ながら拉致問題の全面解決に向けた具体的な方策は何も示されなかった。
安倍首相は日頃から「拉致、核、ミサイル問題の解決に向けて日米でしっかりと緊密に連携する」と述べている。しかし、両首脳が緊密に連携することに同意したからといって、トランプ大統領が米軍の軍事力を背景に金正恩と交渉し、拉致被害者を奪還してくれるわけではない。