【著者に訊け】酒井順子氏/『家族終了』/1400円+税/集英社
30代で父を、40代で母を亡くし、2年前、3歳上の兄までがこの世を去った。そもそも家族には親兄弟等の〈生育家族〉と、結婚や出産による〈創設家族〉があると言い、現在同居中のパートナーとも事実婚を選択した酒井順子氏(52)は、この生育家族の死をもって、『家族終了』を宣言する。
〈ではそれが悲しかったり寂しかったり無念だったりするかといえば、「別にそうでもない」のでした。そうなってしまったものは、もう仕方がない。名家であるわけでもなければ、特殊な技能や看板を受け継ぐ家でもないのであるからして、消えていってもどうということは無いなぁ、と〉
そして彼女は、〈日本では、このような感覚を持つ人が少なからぬ数で存在しています〉と続け、家族を作り、〈イエ〉を維持する営みがどう変わりつつあるのか、この国の家族終了について、さらに観察と考察を進める。
私事だが、筆者は人前で泣ける人より泣けない人、むしろつらい時こそ恬淡(てんたん)と振る舞う人に昔から弱く、本書にもそんな奥ゆかしい含羞の文化を思った。
「終了という言葉が強すぎたのか、皆さん、心配して下さるんですけど、本人は意外と大丈夫なんですよ。今思えば『このままいくと終了しそうだ』と気づいた時の方が悶々としていて、独身だったり子供がいなかったりする人の多くがその予感を共有していると思う。
ただ、どんなに理想的な家族も永遠ではありえないし、自分の終わった家族と世の中の家族全般の流れをリンクさせながら、今回は“普通の家族”とは何かについて考えてみました」