知る人ぞ知る話だが2019年4月、事故物件を専門に扱う不動産仲介サイト「成仏不動産」がオープンした。事故物件とは、自殺や他殺によって前の住人が死亡し、心理的瑕疵のある住宅を指す。事故物件は一般的には住みたがらない人が多いため、相場より1〜2割ほど安く借りられる場合が多い。「成仏不動産」は「事故物件を借りたい人」にターゲットを絞っているため、互いに気持ち良く取引ができるという。
“事故物件住みます芸人”を名乗り、さまざまな事故物件に住み続けているのがお笑い芸人の松原タニシ(37歳)である。普通の人なら嫌がるような場所に、なぜ住み続けるのか。その真意を聞いた。
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◆事故物件で自己成長!?
──事故物件に住むメリットというと、やはり家賃が安いことでしょうか?
タニシ:それも大きいです。もともとはテレビ番組の企画をきっかけに住み始めたのですが、当時は芸人として10年やっても全く売れてなかったので、家賃は少しでも安いほうがありがたかったですね。
──どのぐらい安いんですか?
タニシ:思ったほど激安ではないのですが、敷金礼金などの初期費用が低く設定されていたり、家賃が相場よりも1〜2割ほど安くなるケースが多いです。
──メリットとしては、家賃が安いことぐらいですかね?
タニシ:いやいや、事故物件に住むメリットは、もっとほかにあると思っています。というのも、一度事故物件に住むと心理的な耐性ができて、その後の人生でも再び住むことができるようになるんです。
自己成長というと大げさですが、自分の器を広げることにつながるので、1回は住んでみることをオススメします。友人との会話のネタにもなるので、人生の幅が広がりますよ。そういう意味では、事故物件って僕にとって「人生の希望」なんです。
──どういうことですか?
タニシ:30代を過ぎてくると多くの人は人生の選択肢が限られてくるし、なんとなく世の中のことが分かってきたという感覚も出てきます。大人になるにつれて未知の世界がだんだんと縮小していき、ワクワクする楽しみも減ってしまったように感じていたんです。でも、幽霊や超常現象みたいなものがあるのだとしたら、『まだ自分には分からない世界があるんだ』と思えるじゃないですか。それが、人生の”希望”に見えるんです。
何もかも分かりきってしまったら、きっと人生は辛いし、もっとしんどいと思います。分からない世界があるのというのは、生きていく希望になるんです。世の中はこういうものだ、なんて悟りたくないんですよね。