音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、立川流を担う孫弟子たちについてお届けする。
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平成の落語界を振り返ると、前半は寄席が低迷し立川流が元気だったが、後半は群雄割拠。相対的に立川流の存在感は薄くなった。
そんな立川流を「談志の孫弟子」世代が盛り上げようとしている。彼らは有志による「マゴデシ寄席」を毎月自主開催しているが、落語プロモーターの夢空間が彼らの勢いに注目、4月9日に東京芸術劇場シアターウエストで談志の孫弟子落語会「Y・Tatekawa Blood~江戸の新風~」を開催した。
「Y」は「Young」の略で、出演は立川こしら、立川談吉、立川吉笑、立川寸志。志らく門下のこしらのみ真打で、他3人は二ツ目だ。
トップバッターは「立川流きっての爆笑派」こしら。唯一の真打なのに開口一番というのがまた、こしららしい。演じた『子ほめ』は前半も意表を突くオリジナル・ギャグ満載だが、子供を褒めに行ってからがまた凄い。「この子はあなたのお子さんですか」に対して相手は「本気で言ってるのか?」とシリアスに反応。「洗濯は二晩で乾くかな」といった当たり前のボケの数々がどれも相手の不都合な真実を突いていて、結果「お前だけだよ、腹割って本当のことを言ってくれるのは。外で飲みながら話そう」と酒を奢ってもらうことに成功する、というオチ。
二番手の談吉は談志最後の直弟子だが、二ツ目で談志が亡くなったため一門の高弟立川左談次の門下に移籍、その左談次も昨年亡くなってしまい、現在は談修門下。キレのいい口調で演じた『田能久』は談志が晩年に好んで演じた噺。