ダービーも終わって、今週からは3歳馬と4歳馬が同じレースで走ることも多くなり、同時に2歳戦がスタートする。そしてGIは平成に入って、存在感が大きくなってきたマイルの安田記念だ。競馬歴40年のライター・東田和美氏が、人気通りの決着が少ない安田記念のゆくえについて考察する。
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安田記念はかつて「春の短距離王決定戦」などといわれていた。同じような臨戦過程の出走馬が多かったので、馬券を買う側からすれば比較的予想が絞りやすく、穴党にとっては面白みの少ないレースだった。1989年から2000年までの勝ち馬のうち8頭までが1400mの京王杯SCからの参戦。かつて前年のクラシック上位馬たちが古馬になったときは、天皇賞(春)から宝塚記念というのが、一般的なローテーションだった。
しかし、世界的にスピード競馬が主流になってくると、このレースの価値がグンと上がる。種牡馬としても3200mの天皇賞(春)を勝ったことより、マイルGⅠを勝つスピードを伝えられることが重視されるようになる。2000mのGⅠを勝っていたアグネスデジタルやダイワメジャーはこのタイトルを取ることで種牡馬としての箔がつき、ウオッカやディープスカイなどダービー馬まで参戦、ジャスタウェイはドバイDF→安田記念→凱旋門賞という路線を歩んだ。スプリンターとして内外の1200mGⅠを3勝していたロードカナロアは、ここを勝ったことで、種牡馬としての可能性を大きく広げた。もちろん繁殖牝馬としてもここでの結果は産駒の価格にストレートに反映する。
2001年以降の前走を見ると、京王杯SCからの参戦が4頭いるものの、ヴィクトリアマイル、大阪杯、高松宮記念からドバイまで多岐にわたる。その多彩さを反映するかのように、人気通りの決着は少ない。1番人気が勝ったのはわずかに4回、2着は2回のみで連対率は2割台にとどまっている。2番人気、3番人気の信頼も心許なく、馬連が1000円以下だったのはわずかに1回だけで、万馬券は8回も出ている。
ところが、今年はGⅠ5連勝中のアーモンドアイが出走を表明、圧倒的な人気を集めている。むしろ焦点は東京2400mを2分20秒6で走った牝馬が、東京マイルでどれだけの時計を出すのかに集まっており、馬場状態次第では1分20秒台が出るのではないかとさえ囁かれている。平成30年間で、単勝2倍を切った1番人気馬は7頭いるが、4勝2着2回3着1回と馬券圏内から外れておらず、信頼度は抜群だ。
加えてデビュー以来7戦6勝というダノンプレミアムも出走。敗れたのはダービーだけで、マイルは3戦3勝。2歳時はステルヴィオに連勝、弥生賞ではダービー馬ワグネリアンに勝っている。今春はGⅡを連勝しており、リスグラシューやアルアイン、今回出走するグァンチャーレ、インディチャンプ、ケイアイノーテック、ペルシアンナイト、モズアスコットなど、強い相手を破っている。アーモンドアイが出走しなければ、2倍を切る人気になっていたはずだ。