梅雨どきは間断なく雨が降り続き、ジメジメしてスッキリしない。時折太陽が顔を見せたかと思うと、すぐにまた雲に覆われてしまう。気分が憂鬱になるだけでなく、洗濯物がなかなか乾かなかったり、食品が傷みやすかったりと、面倒ごとは尽きない。
実はこの時期、熱中症のリスクも極めて高い。環境生理学に詳しい横浜国立大学教授の田中英登氏が解説する。
「梅雨の時期はそれほど気温が上がらなくても、とにかく湿度が高い。湿度は、気温と並んで熱中症を引き起こす大きな要因とされています」
米国では「ヒートインデックス」という「気温と湿度」の2つの尺度から熱中症の危険度を割り出す早見表が用いられている。たとえば比較的過ごしやすい26℃でも、湿度が50%を超えたら「要注意」に分類される。
「人間は、汗が蒸発する際の“気化熱”で体内の熱を逃し、体温調節をしています。熱中症はこの体温調節機能がうまく働かなくなったときにも起こります。湿度が高いと、肌表面の汗が蒸発せず、体温が下がりにくい状態になってしまう。そうなると、さらに体温を下げようともっと汗をかき、脱水状態が進むという悪循環に陥ります」(同前)
梅雨どきに熱中症になりやすい理由は他にもある。温泉療法専門医で、東京都市大学教授の早坂信哉氏がいう。
「人間の体は暑い環境にいきなり対応できず、『暑熱順化』というステップを踏んで、10日から2週間ほどかけて少しずつ暑さに慣れていきます。順化を経れば汗をかきやすくなり、体温調節機能が働くようになるので熱中症は起こりにくくなります。ですが、梅雨どきはまだそれが済んでいない。自覚症状なしに事態が深刻化しやすいので注意しなければなりません」