80代での罹患率が9割を超えるとされる白内障。視界がぼやけて霧がかり、光を眩しく感じるなどの症状が出る。これまで3万件以上の白内障手術の執刀経験を持つ、遠谷眼科院長の遠谷茂医師が解説する。
「白内障が進行して日常生活に不自由が生じたら、濁った水晶体の中身を取り除き、人工で透明の眼内レンズに置き換える手術をするのが一般的です。眼内レンズには遠方もしくは近方がハッキリ見やすい『単焦点レンズ』と、焦点が複数で遠近ともに見える『多焦点レンズ』があります」
近年は遠近両方の視力回復効果を謳い、多焦点レンズを勧める眼科医が増えているが、このレンズは総じて高額なうえ、患者のライフスタイルによっては必要がない場合も多い。金儲けのために多焦点レンズを勧める医師もいると言われており、過度に推奨されたら注意が必要だ。
「多焦点レンズが合わない目に入れられてしまうケースも見られます。目とレンズが合わないと、光が大きな輪になって見えたり、放射状にまぶしく見えたりする症状が強く出て、夜間の運転ができなくなったり、心身を病んでうつになるケースもあります。
手術後の視力バランスについてよく考える医師であれば、レンズを入れる前に眼球や角膜の形状を入念に検査しますし、安易に多焦点レンズを勧めることはありません。個々の目に適したレンズを選び、『見え方の質』を考慮してくれる医師を選びましょう」(遠谷医師)