「マッチングアプリ婚です」という結婚の報告を聞くようになった。お見合い紹介業や結婚関連事業を手がけてきた大手企業だけでなく、新興のIT企業なども複数参入し使い勝手や安全性を競いあった結果、マッチングアプリは市民権を得た状態だ。しかし、そのマッチングアプリ内で詐欺が多発しているという。ITジャーナリストの高橋暁子さんが、身のまわりの出会いよりマッチングアプリを好む理由、それを利用した詐欺が起きている背景について解説する。
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マッチングアプリの利用率は上がる一方だ。Facebookや電話番号など比較的簡易な本人認証の仕組みが整っているものが多いため、従来の出会い系サイトより信頼性が高いと言われている。アプリによっては公的な身分証明書が必要なものもある。
最近は、大学生の間でよく利用されているという。大学生は若いし出会いも多いのではと考えるが、彼らに尋ねるとリアルの同級生や知り合いと恋愛関係になるのを避ける傾向があるようだ。都内の大学に通う女子学生は「SNSでつながっているから過去とかも全部わかってるし、元カレもその前の彼もみんなわかっている。別れたら人間関係に影響するからやりづらい。アプリなら別れても影響しないからやりやすい」という。
今の大学生はSNSネイティブであり、ネット経由で出会うことに抵抗感を持たない世代でもある。「(恋人が作りたいという)目的が同じだからマッチングしやすいし便利。アプリを使っている友だちも多いし、デートしている子もいる」(前出の女子大学生)と言い、後ろめたさを感じさせない。
別の大学生は、「学内でアプリを立ち上げたら、(学内の)知り合いが表示されてすぐに閉じた」という。多くのマッチングアプリには、スマホの位置情報を利用して近くにいるユーザーを表示させる機能があるため、このようなことが起きる。もちろん、リアルの友人とアプリ上で出会わないために、多くのアプリはFacebookでつながっている友だちは表示しないという機能を持つが、それでも結構な数のユーザーが表示されるのだ。
◆トラブルが多いマッチングアプリ
一方、マッチングアプリではトラブルも多発している。ある調査結果などでは、利用者の約半数が、マッチングアプリにまつわる何らかのトラブルに遭った経験があるという。
多いのは、見た目の詐称、つまり顔写真が原因のトラブルだ。プロフィル写真を加工しすぎていたり、他人の写真を使っている例もあるようだ。「若い頃の写真を使っていたようで、会ったらほとんど別人だった」という声もある。
多くはFacebookや電話番号のみで登録できるので、現実とは違う経歴を自称してもチェックされることはない。対面で出会うよりも素性を偽りやすいため、独身と偽った既婚者が混じっていたり、年収が話と違ったという例もある。
とはいえ、マッチングアプリはアプリごとに恋活・婚活など目的が明確なので、真剣に交際を考えている人と出会いやすいところがメリットでもある。一方で、そのようなアプリでもやはり遊び目的のユーザーも少なくないようで、「いきなり関係を求められて、断って逃げ帰るのが大変だった」という女性もいた。
◆マッチングアプリで詐欺が多い理由
マッチングアプリには、真剣な交際を始めたい人たちが集まっているのだが、実は、詐欺まがいの行為が多発している場所でもある。多いのは、ネットビジネスや怪しい宗教の勧誘をされる例だ。