人間においては、認知症や生活習慣病との関連も指摘される歯。猫はどうなのか。
「実は猫はほとんど虫歯になりません」
そう話すのは、猫専門病院Tokyo Cat Specialistsの獣医師・有田早苗さんだ。
「さまざまな動物の口の中の細菌を調べた結果、猫の口の中には、虫歯を発生させるような細菌がいないのではと推察されています」(有田さん・以下同)
猫の場合、虫歯よりも注意したいのが“歯周病”だ。3才以上の猫の約8割は歯周病との報告もあるという。歯周病は、歯垢の中に潜む細菌が主な原因になる。歯垢を取らずに放置しておくと、石灰化して歯石となり、ますます取りづらくなって、歯周病の症状を進行させてしまう。
さらに、腎臓病や糖尿病などの慢性疾患や、猫免疫不全ウイルス感染症(通称、猫エイズ)などの感染症によって免疫力が低下していると、歯周病にかかりやすく、症状が悪化しやすい傾向にあるので注意が必要だ。
歯周病は悪化すると、歯茎が腫れて出血したり、歯が抜ける、痛みが出る、さらには、あごの骨が溶けることもあるという。
「口臭がひどい、痛がって食欲をなくしていたら歯周病の可能性があります。すぐに動物病院に相談してください」
そんな歯周病予防の要は、“歯みがき”だ。歯石がたまって取れない場合は、動物病院で全身麻酔をして除去する方法もあるが、そうなる前のホームケアが重要だ。
とはいえ、猫の歯みがきは容易ではない。いきなり歯ブラシでみがくと暴れて、二度とみがかせてくれなくなるので、まずは口の周囲を触ったり、口の中に手を入れて歯を触るなど、口に触られることに慣れさせることから始めよう。
触られるのに慣れたら、ガーゼに猫が好む味の歯みがきペーストをつけ、それを指に巻いて歯をやさしくみがく。
「ここまでできるようになってから、ようやく歯ブラシを使います。歯ブラシは動物用に限定せず、人間の小児用でも大丈夫です」
歯ブラシは歯に対して約45度の角度で当て、歯と歯茎にたまった歯垢をかき出すようなイメージで、小刻みにやさしく動かす。この時、強くこすりすぎると歯茎が炎症を起こすので注意したい。
「歯みがきは1日1回が理想的ですが、2~3日に1回でもかまいません。猫の性格を見ながら、無理のないケアをしてあげましょう」
6月4~10日は『歯と口の健康週間』。人間同様、この機会に愛猫の歯の健康管理も見直してみては?
※女性セブン2019年6月20日号