子供の部屋を母親が事前の通知なく掃除する──多くの人が経験したであろう“家庭の風景”だが、もし母親が捨てたのが、貴重なAVだったら、肉親に損害賠償を求められるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
興味深い訴訟がアメリカで起きました。父親が成人している息子のAVを破棄したところ、怒った息子は父親を相手に約970万円の損害賠償を求めたのです。私も先日、母に大事にしていたAVを捨てられました。その中に今では入手困難な作品もあったのです。肉親の母に損害請求できますか。
【回答】
他人物なのを承知の上、無断で捨てれば、所有権侵害の不法行為。捨てたことに正当な理由がない限り、損害賠償責任を負います。それなのになぜ、捨てたのでしょうか?
ゴミ同然の状態だったから、片づけたのであれば、故意に財産権を侵害する意思や過失もないので、不法行為にはなりません。ゴミとまではいえなくても、古くて保管する価値もない、と誤解してもやむを得ない場合も同様でしょう。
大切なものであれば、お母さんが間違って捨てないよう注意すべきでした。仮に不法行為だとしても、相当程度過失相殺されるはずです。ただし、大事に保管していることがわかっているのに、お母さんが捨てた場合は、不法行為といわざるを得ません。