1981年以降、がんは男女ともに日本人の死因1位である。だが、日進月歩で新たな治療法が次々と生まれ、“不治の病”ではなくなりつつある。
6月6日、京都大学の研究グループが、子宮頸がんの前段階である「子宮頸部上皮内腫瘍」の患者に薬を投与する治験を開始したと発表した。実用化はまだ先だが、若い女性に多い子宮頸がんの治療に明るい兆しが見えている。翌7日には、大阪大学と国立がん研究センターなどの研究グループが、大腸がんの初期に増える腸内細菌を特定したと発表。さらに研究が進めば、早期発見や治療につながっていくだろう。
つまり、最新の医療をもってすれば、早期に治療をはじめ、体に負担をかけずに治すことも可能だということだ。
裏をかえせば、発見が遅れるほど、最悪の状態に陥る可能性が高くなっていくということでもある。さらに女性はさまざまな理由で発見が遅れがちだという。あいクリニック中沢院長の亀谷学さんが言う。
「女性はがん検診の受診率も低いうえ、月経や更年期障害などが原因で、慢性的に体の不調を感じる人も少なくありません。がんの種類によっては、そうした女性特有の症状と混同しやすく、気づきづらいといえます」
「なんとなく調子が悪い」は体が発する大きな病気のサインかもしれないのだ。
医師たちが「見逃しやすい」と声をそろえるのが、女性のがん死因トップの大腸がんだ。東京ミッドタウンクリニックの森山紀之さんが言う。
「大腸がんがある程度進行すると、下痢と便秘を交互に繰り返す症状が出てきます。大腸にできた腫瘍のせいで腸が細くなり、細くなった腸の上部に便がたまって便秘になる。便秘が続くと、今度は便を出そうとして腸が水分を取り込んで便を溶かし、下痢になるという流れです。下痢と便秘の頻度は、3日に1回や、1週間に1回など個人差があります」
女性はホルモンバランスの乱れや腹筋が弱いことが原因で、もともと便秘になりやすく、便秘薬を慢性的に服用する人も少なくない。そのため、こうした症状を見逃しやすいという。森山さんが続ける。
「特に高齢になるほど、便秘薬を日常的にのんでいる人が多いので、便秘や下痢が交互に起きてもわかりづらい可能性がある。たとえば、薬をのまなくても便秘の後に妙に快便が続くなど、体がいつもと違う状態にある時は気にした方がいいでしょう」