トヨタ自動車が17年ぶりに復活させたスポーツカーの新型「スープラ」。5月に行われた発表会では、友山茂樹副社長(GAZOO Racing Companyプレジデント)が、「クルマは五感で感じるもの。何か熱いものが蘇ってくるのを保証します」と太鼓判を押した。その肝心の“乗り味”はどうか。モータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が試乗レポートする。
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17年ぶりの復活を遂げたトヨタのフラッグシップスポーツカー、GRスープラ。BMWとの共同開発で、トヨタではGRスープラ、BMWではZ4として販売されます。共同開発とはいえ、RGスープラがクーペで、Z4がオープンカーであり、見える部分の部品は9割が別モノです。生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤー社。つまり、GRスープラは輸入車となります。ウインカーレバーも左側です。
◆新型開発でターゲットとなったクルマ
トヨタとBMWがスポーツカーを新しく共同開発するということで、ターゲットとなったクルマがあります。それはポルシェのケイマン/ボクスターです。こちらもクーペとオープンカーの組み合わせで、ミドルクラスのスポーツカーでは世界最高峰と見なされています。そのライバルに勝つ! という高い目標で、GRスポーツとZ4は開発されました。
ライバルに勝るため、開発陣は思い切った手を打ちました。それはホイールベースを、これまでの常識を破るような短いものにしたのです。
幅(トレッド)に対して前後(ホイールベース)が、非常に短い。なんと、トヨタの86よりも10cmもホイールベースが短いのです。それに対して、トレッドは5~9cmもGRスープラの方が幅広くなっています。これだけホイールベースが短いのですから、俊敏性は抜群でしょう。
ただし、超ショートホイールベースには欠点もあります。あまりにホイールベースが短いと、挙動が不安定になってしまうのです。そこでGRスープラとZ4は、後輪に電子制御のアクティブデフを搭載しました。左右の車輪のロック率を0~100%まで、瞬時に変化させることのできる機構です。
加減速時など不安定になりそうなときは、左右の回転差を抑えて車体を安定化させ、逆にくるりと小回りしたいときは、回転差を許容する。そうすることで、安定性と敏捷性を両立させました。基本特性を敏捷にして、電子制御で必要なときだけ安定化させるという手法です。これにより、欧州のアウトバーンでの時速200km以上の超高速走行でも安定性に問題はないとトヨタの開発陣は胸を張ります。
そして、エンジンには、BMWが開発した3リッター直列6気筒ツインスクロールターボエンジンと2リッター4気筒のツインスクロールエンジンの2種類を搭載します。6気筒は最高出力340馬力/最大トルク500Nm。4気筒は最高出力258馬力/最大トルク400Nmと最高出力197馬力/最大トルク320Nmの2種類のチューニング違いを用意しました。トランスミッションはすべてが8速ATです。
この3つのパワートレインが3グレードに分けて販売されます。6気筒が「RZ」(690万円)、4気筒の258馬力が「SZ-R」(590万円)、197馬力が「SZ」(490万円)となります。ちなみに「SZ」は、電子制御デフではなく、オープンデフです。