高齢化社会が進む日本において課題となるのは、老親介護だ。特に気になるのは、その食事だろう。料理研究家で栄養士の今泉久美さんは、週末に東京と山梨にある実家を往復しながら、82才の実父のために料理を作り置く生活を、もう15年以上も続けているという。
高齢者は栄養のバランスをよくするためにも、いろいろな品目を食べた方がいい。そこで今泉さんは、おかずを“選ぶ楽しみ”も考えて、一度に7種類くらい作り置く。
「特に重要なのはたんぱく質です。高齢になると血糖値を気にして、カロリーを抑えた野菜中心の食事がよいと思われがちですが、たんぱく質や脂質を摂らないと、かえって血糖値は上がりやすくなることも」(今泉さん、以下同)
また、基本的に食事量が少なくなる高齢者は、肉、魚、卵、納豆、豆腐など、いろいろな食品から積極的に摂ることが大事だともいう。減塩に加えて、たんぱく質を摂取できり料理を作り置きにも取り入れている。
では、作り置きにはどんな料理が向くのだろう。
「ホッとする家庭の味がよいので、手の込んだ料理をズラリとそろえる必要はありません。むしろシンプルな素材寄りのものを数種類作っておくと、アレンジもきいて食卓が豊かになります。
たとえばアスパラやブロッコリー、ほうれん草をゆでただけのものは、ポン酢、おかかとしょうゆ、マヨネーズなど調味料を変えて数回、楽しめます。かぼちゃやさつまいもは甘煮、里いもや長いもは蒸しただけでもおいしい」
また食材の表面を調味料でコーティングするような調理法もおすすめだ。
「肉や魚なら照り焼きや南蛮漬けのように小麦粉をつけて焼き、調味料をからめると、時間がたっても味が落ちません。煮びたし、焼きびたし、揚げびたしなど、汁に浸した状態で保存する料理もいいですね。逆に魚の塩焼きや野菜炒めのようなものは不向きです」
今泉さんの作り置きの定番は、麻婆豆腐、餃子、カレーなど。お父さんのテンションが上がるという餃子は、キャベツの代わりに水気が出にくいれんこんを使い、焼いたりゆでたりしてから冷蔵保存。食べる人の好物をラインナップするのも大切なポイントだ。
さらに作り方、上手な保存法のコツを聞いた。