人生100年時代となり、後半生をどう生きていくか、幸せに過ごすためにはどうすればいいのか、多くの人の関心事となっている。そうした中、昨年映画化もされたベストセラー『終わった人』(講談社)では定年後のサラリーマンとその妻の生き様をユーモラスかつ辛辣に描いた脚本家の内館牧子さん(70才)が、続いて著したのは『すぐ死ぬんだから』。70代後半の女性を主人公にした最新作は、死や老いを向こうに見据え、人生100年時代をどのように生き切るかを問うている。先日刊行した『70歳のたしなみ』(小学館)で「70代は人生の黄金時代」と提唱し、早くも8万部を突破するベストセラーとなっている昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さん(72才)と初対談。
内館:50代から生き方をセーブして老後に備えて、じゃあその人は70で豊かになるかというと、保証はできない。私は54で大相撲を研究したくて、そのためには宗教学を学ぼうと東北大学の大学院へ入りました。当時54の私が東京と仙台の二重生活になるわけで、周りからは「そんなお金の使い方はやめて、老後に取っておいた方がいいわよ。50代から人生は下り坂で収縮していくんだから、今からお店を広げてどうするの?」って散々止められたんです。でも、「人生出たとこ勝負」というのが私の信条だからと踏み出しました。そうしたら大学院での生活は刺激的で、講義は息もつけない面白さで、充実した時間でした。
坂東:そうですよ。出たとこ勝負というのはつまり、今に全力投球ということですもの。だいたい、50代で終活を始めていたらもう20年経っていますよ、さすがに長すぎます(笑い)。私は公務員の職を退いた後に、57で昭和女子大学の教員になりました。もう人生は終わったと思い、悩みもしましたが、その時の挑戦があるから今の私があるわけです。
内館:今、70まで働いてきて感じることは、仕事というのは人生の喜びであって、仕事の代わりになるものは果たしてあるんだろうかって。
坂東:私にとっても仕事は最大の喜びかつ生きている手応えで、公務員を退職しても何か仕事がある人になりたいとずっと思っていました。どんな仕事でも、ゼロになるよりは絶対何かあった方がいいと思う。時間もエネルギーもある高齢者は何百万人といるわけで、その活力を使わない手はないですよ。例えば、若い人は朝眠いだろうからコンビニの早朝シフトを早起きの高齢者世代が担うとか。その時、立ち続けるのがつらいなら座ってレジを打てばいい。そんなふうに世の中全体で、高齢者が働きやすい仕組みを考えて作っていかないといけないと思うんです。